北陸新幹線の新大阪駅、その先をどうするか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)

» 2017年03月17日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 2016年11月11日、国土交通省鉄道局は「北陸新幹線敦賀・大阪間のルートに係る調査について」という報告書で、南回りルートについても“参考に調査”した。その結果、北回りに比べて南回りは約10キロメートル長く、費用は約900億円高く、便益は約400億円低くなった。ただし、参考調査として、費用対効果の計算に含まれない要素として、関西文化学術研究都市の活性化には大きく貢献すると説明している。そのために駅を作るわけで、“我田引鉄”というわけだ。

北回り、南回りの費用対効果比較。奈良県を経由しないため、データは北回り案と拮抗し、むしろ南回り案の魅力が増したと言えそうだ(出典:国土交通省発表資料) 北回り、南回りの費用対効果比較。奈良県を経由しないため、データは北回り案と拮抗し、むしろ南回り案の魅力が増したと言えそうだ(出典:国土交通省発表資料
南回り案は北回り案より約3キロメートル長く、所要時間が2分延び、費用は約100億円高く、総便益は約100億円低い。しかし、計算には含まれないメリットとして「地域開発の潜在力」がある。“我田引鉄”もこの程度なら許容されるだろう、という手本になるかもしれない 南回り案は北回り案より約3キロメートル長く、所要時間が2分延び、費用は約100億円高く、総便益は約100億円低い。しかし、計算には含まれないメリットとして「地域開発の潜在力」がある。“我田引鉄”もこの程度なら許容されるだろう、という手本になるかもしれない

 2016年12月14日、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームは小浜・京都ルートを裁定する。ただし京都〜新大阪間は判断を見送り、引き続き国土交通省が調査を重ねた。なお、当初の南回り案は経由地の奈良県知事が反対した。経由地として駅を作られても県民は京都駅を利用するため、県の財政負担に見合わないと表明した。

 そこで、国土交通省は奈良県を経由しない南回りの3つのルートで調査し、そこから京都府京田辺市の片町線松井山手駅付近に新駅を作るルートに絞り込み、北回り案と南回り案の2つに絞って与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームに報告。費用便益比はきん差となり、やや北回りが優位だったものの南回りに決定した。建設費を一部負担する京都府の強い要望があったとされる。舞鶴案の敵を南回り案で討ったとも言える。北回り支持のJR西日本も素直に従った。所要時間も費用もきん差だし、それで丸く収まるならいいか、というところだろうか。

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