マスクとベゾス、二大巨頭が挑む宇宙アクセス革命宇宙ビジネスの新潮流(2/4 ページ)

» 2017年04月07日 08時10分 公開

ビジネス面も着実に進ちょく

 ビジネス面でもSpaceXは着実に歩を進めている。同社のビジネスは既存市場の切り崩しが基本で、国際宇宙ステーションへの物資輸送サービスと商業衛星通信の打ち上げサービスが二大市場。ここに3つ目の市場として加わりつつあるのが、安全保障関係の打ち上げサービスだ。従来は米United Launch Allianceが独占してきたが、昨年4月には米空軍から次世代GPS衛星の打ち上げを8200万7000ドル(約90億5600万円)で受注した。

 そして、今年に入り2機目の次世代GPS衛星の打ち上げ受注(9600万5000ドル)にも成功。これらは米空軍による一連の打ち上げ契約で、計15機のうちの最初の2機だが、次回は7機まとめた発注が見込まれており、その大型契約をUnited Launch Allianceがとるか、SpaceXがとるかに注目が集まる。なお、米空軍は話題となっている再利用ロケットに関しては、「商業的に成功した暁には、将来的に検討する」と語る。

すべての道は火星に続く

 再利用ロケット、射場、顧客開拓の全ての面で躍進を続けるSpaceXだが、関係者の多くは「すべてが火星につながっている」と語る。マスク氏の起業領域はSpaceX以外にも、電気自動車メーカーのTeslaや、神経科学技術を開発するNeuralinkなど、その全てが人類課題を解決することが目的になっている。

 昨年メキシコで開催された宇宙関連会議でマスク氏が掲げたビジョンは「Making Humans a Multiplanetary Species(人類が複数惑星に住む世界を創る)」であり、40〜100年の時間をかけて火星に100万人を送り込み、自立した文明を築くことを語った。SpaceXによると火星植民計画に関しては、2020年(当初計画の2018年から延期)から無人飛行を計画、早ければ2024年の有人飛行を計画している。今後も目が離せない。

数百万人が宇宙で暮らし、働く世界を創る

 マスク氏の快進撃とともに、注目が高まりつつあるのが、Amazonの創業者であるジェフ・ベゾス氏が率いるBlue Originだ。昨年コロラドで開催された全米最大規模の宇宙カンファレンスに登壇した同氏は「数百万人という人が宇宙で暮らし、働けるようにしたい。宇宙までも見据えた文明(spacefaring civilization)にしたい」と語っている。視座の高さと世界観の広さはマスク氏とまったく引けを取らない。

 Blue Originのビジョンに関して、ベゾス氏は「Amazon創業当時、既に郵送サービスやネットアクセスを可能にする電話回線、クレジット決済などのインフラがあったが、宇宙に関してはそういったピースがない。重要なのは現状よりずっと低コストで宇宙へ行けるようになることだ」と語っている。宇宙アクセス革命こそがベゾス氏が目指すイノベーションだ。Blue Originの創業は、実はSpaceXよりも早い2000年。当時ドットコムバブル全盛期に密かにロケットベンチャーを創業したベゾス氏の先見の明はすごい。

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