気になる人はご自身でググっていただきたいが、この会社もネットでは匿名の人々からかなり言いたい放題やられており、なかには「くらコーポレーション」だったら間違いなく訴訟沙汰になるようなものもあるし、「そりゃいくらなんでも妄想だろ」というような都市伝説のような話もささやかれている。
では、そのような話を触れ回るネットユーザーをマックがバンバン訴えているか、というとそういう話はあまり聞かない。これは海のように心が広いから、ではなくて消費者のイメージがなによりも重要な外食ビジネスにおいて「法廷闘争」というものが、費用対効果に見合うものではなく、むしろ大きなリスクになるということを誰よりもよく理解しているからだ。
1994年7月、英国のマクドナルドが環境活動家を名誉毀損で訴えことがある。「マクドナルドの何が悪いのか」という冊子を世間にバラまいたからだ。
そこには経営陣が決して看過することのできない話がバンバン掲載されていた。マックの「魂」であるハンバーガーに「悪質な肉」(日本経済新聞 1994年7月4日)が使われている、従業員を不当な低賃金で雇って搾取している、熱帯雨林を破壊しているなど……。
この法廷闘争は当時、英国での訴訟の最長記録を塗り替える314日間に及んだ。結果、冊子で主張されていることの多くは裁判所から「根拠がない」と認定され、マクドナルドは勝訴。活動家に賠償金の支払いを命じた。
マクドナルドは公平な手続きで、デタラメ情報をふりまいた人を黙らせたわけだが、英国の消費者たちが溜飲を下げたかというとそうではなく、むしろ「逆」の結果となった。「メディアは巨大資本が貧乏な環境活動家はたたきつぶそうとしているイメージでこの訴訟をとらえた」(日本経済新聞 1997年7月1日)ということもあり、裁判報道をされるたび、消費者に「弱い者いじめをする巨大企業」という印象を与えてしまったのだ。
つまり、英国マクドナルドは膨大な訴訟費用を注ぎ込んで、自分自身のネガティブキャンペーンを1年近く続けてしまったというわけだ。
こういう苦い経験をすると、企業でも人でも他の解決策を模索する。そこでマクドナルドがたどり着いたのが「積極的な情報公開」である。
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