Google傘下の衛星企業をPlanetが買収、リモセン事業の未来は?宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)

» 2017年05月02日 08時05分 公開
前のページへ 1|2       

顧客開拓の多様性

 顧客開拓の観点も面白い。Planetでは自社による直接営業以外に、パートナー戦略を推進してきている。具体的には同社の画像をリセールするアライアンスパートナーと、Planetのデータを基にエンドユーザー向けのアプリケーションを開発するアプリ開発パートナーだ。それぞれのリストは同社のWebに公開されている。

 特に後者では、農業分野では営農サービスベンチャーとして有名な米Farmers Edge、米FarmLogs、米Climate Corporationなどと提携している。金融分野では衛星データ解析ベンチャーとして名高い米Orbital Insightとも提携。Planet自身は衛星アセットの保有から幅広い衛星データ提供までに特化し、ユーザー向けのアプリケーション開発は領域ごとに特化したパートナー企業が行う。産業全体としての水平分業モデルとも言える。

 加えて、Black Bridge買収時には、同社が保有しいていた農業系を中心とした顧客アセットも獲得するなど、自社、提携、買収などあらゆる方法で顧客開拓している。今回のTerra Bella買収に伴って新たに締結したGoogleとの複数年契約も、Planetの売り上げ拡大に貢献するものと考えられる。

高度な衛星写真(出典:Terra BellaのFacebookページ) 高度な衛星写真(出典:Terra BellaのFacebookページ

可視光だけではない

 PlanetによるTerra Bellaの買収は可視光センサーの衛星コンステレーションにおける二大企業の統合とも言える。ただ、世界的には可視光以外の衛星コンステレーションを検討する企業も増えている。気象分野では米GeoOpticsがGPS電波掩蔽(えんぺい)法を使った24機の衛星コンステレーションを計画、大気の温度・湿度・気圧などの気象情報獲得を狙う。米Spireも同様にGPS電波掩蔽法のコンステレーションを開発中だ。

 また、レーダー衛星にも注目が集まる。日本では政府が管轄するImPACT(革新的研究開発推進プログラム)で小型のSAR(合成開口レーダー)衛星の研究開発が進められている。海外では米Capella SpaceがSAR衛星の計画をしており、国際宇宙ステーションに設置した高精度カメラで地球観測を行っているカナダの衛星ベンチャーUrtheCastも、8機の光学衛星と8機のSAR衛星から構成されるOptiSARというコンステレーションを計画中だ。

 他方で、衛星データ利用の議論も変化しつつある。先週、筆者が参加したシリコンバレーの宇宙カンファレンス「Space2.0」では、「Earth Pixels」と題した衛星データ利用に特化したセッションがあった。従来こうしたセッションでは衛星ベンチャーが自社の衛星スペックと衛星データ利活用事例を提供者側の視点で話すことが多かったが、今回の登壇者は先述のFarmers EdgeやClimate Corporationなどユーザー向けのアプリケーション開発者だ。

 さまざまな形で変化しつつあるリモートセンシング産業、今後の動向を見ていきたい。

著者プロフィール

石田 真康(MASAYASU ISHIDA)

A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

ハイテク業界、自動車業界、宇宙業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙民生利用部会および宇宙産業振興小委員会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.