――インバウンド(訪日外国人観光客)については、それよりも日本人の国内観光客の方が重要だと星野代表はよくおっしゃっています。一方で、星のや東京は6割が外国人客、「星のや京都」は4割と、インバウンド需要も取り込んでいます。
「界 津軽」は外国人客が3%ですよ。世界ではインバウンドマーケットが伸びているので無視してはいけませんが、依存しすぎてはならないということです。ある国に特化しないことも重要で、集客を分散することによって安定につながるからです。
ただし、日本の場合は観光マーケットの半分以上がインバウンドになるということはあり得ません。(2020年に4000万人という)政府の目標を達成したところで、国内需要はまだ7割あります。まずは日本人観光客の需要を大切にして、日本人に受けるものを作り、それが結果的にインバウンドにも受けるというアプローチをとるべきだと思っています。
――現在、国内外で37施設を運営しています。この数は順調だと思われますか?
施設数や売上高など、基本的に数値目標は持ちません。淡々と事業を進める中で、結果的に施設や売り上げが増えたととらえています。あまり数字ありきで仕事をしない方がいいと思っています。
一方で、集客の仕組みには目標を持っていますし、各施設を運営するスタッフの組織文化や、そこで仕事することが楽しいと思える環境を作ることにはこだわっています。
1つ1つの施設を運営するには相当な労力を使っているので、ここまでの成長が予想以上ということはないし、スピードが遅いという感覚もありません。
――今や星野リゾートに運営をお願いしたいという引き合いは多いと思うのですが、案件を選ぶ基準はありますか?
何でも受けるようにしています。例えば、タヒチの「Kia Ora ランギロア」はほかの施設とまったくシナジーが効かない場所ですが、投資会社から依頼されて、私たちの力がプラスになるのであればということで運営を始めました。それなりに業績は伸びています。
私たちの運営手法はグローバルで通用すると思っているし、任せてもらえるのであれば、あまり基準を設けずにどんどん運営していきたいです。
ただし、国内で今後増やしていくときに大事にしているのは、星野リゾートのファンが日本中のいろいろなところに行ってみたいというニーズに応えられるかどうかという点です。その観点で考えると、拠点のないエリアに出していくことが、今まで以上に重要になっています。
例えば、本拠地の軽井沢には既に大きな施設がありますから、そこにもう1軒出すよりも、星野リゾートが拠点を持っていない場所に出す方がが当然優先順位は高いのです。顧客は、星野リゾートは日本の訪れてみたい地域に必ず施設があると期待してくれているわけですから。青森には3施設あるけど、岩手や秋田には1軒もありません。これは問題だと思っています。
沖縄もそうです。沖縄は大きな観光マーケットで、星野リゾートも離島には施設を持っていますが、本島にはありません。沖縄本島にないことを不思議に思っている顧客さえ出てきている状況は問題です。ですから、読谷(よみたん)のリゾート開発プロジェクトに取り組んでいるのです。
国内に関しては、戦略的に施設を持たないといけない場所はまだ多いです。
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