ソフトバンクは「金の卵を産むガチョウ」 孫社長の自信純利益初の1兆円超え(2/2 ページ)

» 2017年05月11日 12時29分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]
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Qualcommと提携、19年メドに5Gの開発進める

 17年度以降のソフトバンクグループの戦略の中心にあるのは、第5世代移動体通信技術(5G)だ。同社とSprintは10日、5Gに対応したサービスと端末の開発に向け、米Qualcommとの提携を発表した。

 この提携は、5Gが持つ「高い周波数を使用するため、屋内に浸透しづらい」という課題の解決が目的。今後は3社で協力して開発を進め、比較的屋内に浸透しやすい2.5GHzに対応した商品を19年後半まで提供開始する方針だ。

photo Sprintの5G技術の開発方針

IoTの発展を見込んでチップ事業を加速 ファンドも本格化

 ARMのチップ事業にも注力する。孫社長は「今後、人工知能(AI)の能力が人間を超える『シンギュラリティ』が到来し、IoT(モノのインターネット)が爆発的に広がる」とみており、IoTに欠かせないチップ需要の増大を見込んでいるためだ。ARMの累計チップ出荷数は、21年には現在の約2倍の2000億個に達する予想という。

photo ARMのチップ事業の展望

 孫社長は「従来のIT業界のビジネスは、人が作ったデータに対し、プラットフォームを通じて課金するモデルが主流だったが、これからはモノがつくるデータに課金する時代が来る」と展望を語った。

 さらに、サウジアラビアと共同で設立を進めている、テクノロジー分野に出資する投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の活動を本格化させ、さまざまな企業への買収・投資を進めていくとした。

記者会見での一問一答

photo 会見での孫社長

 今後の事業戦略に関する会見での質疑応答は次の通り。

――Sprintは営業黒字化に成功したが、最終黒字化はまだ達成できていない。達成の見通しは立っているのか。

孫社長: 過去に発行した社債の金利が非常に高く、経営を圧迫している。ただ、業績そのものは伸びているので、最終黒字化は時間の問題。ただ、明確な時期についてはコメントを差し控えたい。

――ARMがサーバ向け半導体への進出を開始したが、今後の展望は。

孫社長: サーバ向け半導体は現在、米Intelが市場シェアの大多数を占めている。ARMはゼロからのスタートだが、数年以内にシェアの2割程度を獲得したい。

――国内の他社では、海外の企業を買収後、のれんの減損を計上するケースが多いが、なぜ孫社長はARMに対して自信を持てるのか。

孫社長: 今の世の中でチップなしに生活が成り立つことは考えられない。ARMは市場シェアも圧倒的で、優位なポジションを確立しているため、心配していない。

――自動運転技術など、5Gを活用した自動車事業を行う予定はあるのか。

孫社長: 自動車に関しても、さまざまな側面から準備はしている。自動車にもARMのチップを使用する予定。詳細は近日中に発表する。

――米携帯業界の再編に向け、さらに携帯事業者を買収する予定はあるのか。

孫社長: T-Mobileが一番の本命。今後交渉に入っていきたいが、相手があってのこと。他により良い条件を提示してくれる企業があれば、心を閉ざさず検討していきたい。

――アジア各国に再生可能エネルギーの送電網を配備する「アジアスーパーグリッド構想」の現状はどうか。

孫社長: 日本国内では有数の電力サービスを築くことができた。アジアでは、インドでメガソーラーを3月に稼働させている。中国、ロシア、韓国、モンゴルなどの企業とも話し合いも進めており、前向きな反応を得られている。技術・コスト面は接続可能なレベルに達しているが、国の許認可が得られていない。多くの国々で機運が高まることを待つ必要がある。

――ソフトバンク・ビジョン・ファンド経由での投資は、どの程度の規模になるのか。

孫社長: 同ファンド経由で30社に近く投資する予定で、現在交渉を進めている。今後、ソフトバンクグループは投資会社としての側面が生じるため、業績評価の際は、通信事業を中心とした営業利益と、投資の結果得られた利益の2つの角度で判断してもらいたい。

――今後の孫社長自身の方針はどうなるのか。

孫社長: ゆくゆくは、グループ内の各企業のCEOに経営を委ね、私はグループの構成に注力する。各業界のナンバーワン企業を次々と仲間に入れていきたい。



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