LINEが台風の目になる? 会話型AIの世界“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2017年06月15日 06時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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LINEが台風の目になる?

 この話は、ネット通販やコンテンツの分野だけにとどまならい。外食産業のような世界にも、確実に変化の波は押し寄せてくる。近い将来、会社のオフィスに1台、こうした会話型AI端末を設置することで、必要な文具の手配やお弁当などのデリバリー、飲み会の予約など、あらゆる雑務をAIが引き受けるようになるはずだ。

 AI端末は会社のメンバーに誰がいて、どんな好みがあるのかも理解しているので、「今週、飲み会をしたい」と話しかければ、最適なお店の予約をしてくれるだろう。そうなってくると、外食産業の分野においても、真っ先にこうしたAI対応を行った企業とそうでない企業には大きな差がついてくる。

 このような視点でAIの業界を眺めて見ると、相当なポテンシャルを持っているのがLINEである。普通に考えれば、AIの技術で先行するGoogleや、ネット通販の巨大なインフラを持つアマゾンに対して、後発組には勝ち目がないように思える。だがLINEは、日本人のほぼ全員がアカウントを持ち、決済といった基本インフラも備えている。業界にもよるだろうが、LINEを社員同士の日常的な連絡手段に使っているところもある。

 こうした環境に本格的なAIが投入された場合、LINEのサービスが急成長する可能性は十分にある。実際、小売り業界を中心に、LINEを活用したチャットbotサービスの利用も広がりを見せている。会話型AIの普及は、IT業界以外のあらゆる業界を巻き込むと同時に、IT業界の再編も促す可能性があるのだ。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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