ネットを遮断された「英語圏」の地域は、どうなったのか世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2017年06月22日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

これが「未来の抑圧」の姿

 遮断によって、どのようなトラブルが発生したのだろうか。まず行政機関や学校などが利用できなくなり社会生活に支障が出た。経済的にも、銀行などがネットワークにアクセスできずに、ビジネスや個人の送金ができなくなり、市民が現金を引き出すこともできなくなった。また病院など医療分野にまでその影響は及んだ。

 英BBC放送は、地元からのリポートで、コミュニケーションが滞り、ニュースにアクセスできないために、世界で何が起きているのかも分からないと嘆く地元民の様子を伝えた。またネットが遮断されたことで、まるで牢屋の中にでもいるかのように周辺地域や外部から孤立してしまっているのに、カネがないために移動すらできないという声もあった。

 またアフリカのニュースサイトは、ある若い医師の声を拾っている。

 この医師は、遮断前まではさまざまな疾患についての最新情報や処置方法を得たり、離れた場所にいる同僚医師らからのセカンドオピニオンなどアドバイスを聞くためにネットを日常的に活用していた。だが遮断されてそれができなくなり、数時間かけてネットがつながるフランス語圏にまで移動せざるを得なくなったという。メールをチェックするためだけに5時間も移動したことがあったらしい。そんなことから、「途中から、フランス語圏に暮らす友人たちにパスワードを教えてメールをチェックしてもらうようになった……プライバシーも何もなくなった」と取材に答えている。

 そんな状況で英語圏地域の市民は「ネット難民」と化した。そして、彼らを受け入れるために「難民キャンプ」が設置されるという動きも起きた。英語圏からネット接続が可能な地域まで行くのはあまりにも遠く時間がかかるため、有志が英語圏からそう遠くないフランス語圏側の村にネットが利用できるスペースを提供した。

 結局は、国際社会からの批判などを受けた政府が、3カ月後に英語圏のネット接続を再開した。ただ遮断されていたことによる経済損出の合計額は、少なくとも450万ドル(約5億円)にもなったと見られている。こうしたカメルーンの状況を見て、元CIAの内部告発者であるエドワード・スノーデンも、これが「未来の抑圧」の姿だ、とロシアからツイートした。

スノーデンは「これが未来の抑圧の姿だ」とツイートした

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