GMS大量スクラップ時代の風に乗るドン・キホーテ小売・流通アナリストの視点(3/4 ページ)

» 2017年06月28日 07時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

インバウンド需要はいまだ衰えず

 こうした特徴を書くと、「それでは時間に追われた多くの人を集客できないではないか」と思われるかもしれないが、まさにその通りなのである。首都圏を例にとれば、食品を安く短時間で買いたい人はオーケーストアに行けばいいし、PB(プライベートブランド)商品でもとにかく安く手に入れたい人はイオン系のスーパーに行けばその目的は果たせる。近所のスーパーでも特売日を狙って行けば、移動時間を短縮して安いものを手に入れることは可能だ。時間がない大半の人たちが、その選択肢にドン・キホーテを入れて考えることは、よほど近隣住民でない限りそう多くはないだろう。

訪日外国人の来店がいまだに衰えない 訪日外国人の来店がいまだに衰えない

 また、ドン・キホーテはナイトマーケットの開拓者とされ、24時間営業の店舗を含め、深夜まで営業していることを基本とし、夜中でもにぎわっているのが特徴だが、そのことも大多数のファミリー層が中心顧客ではないことを示している。ただ、ドン・キホーテは基本的にそんなことは意に介さない。なぜなら、少数派ではあるが時間があって買い物を楽しみたい人をターゲットに、深夜まで総合小売業をやっている店はほぼ皆無であり、競合が存在しないからである。

 ドン・キホーテが、オンリーワンの業態であるというのは、世界的に見てもそのようだ。訪日外国人のガイドブックで同社の店舗は日本の見どころの1つとして、その認知度は極めて高い。特に小売業の発展途上段階にあるアジア諸国からの外国人客にとって、こんな時間消費型小売業の店舗を自国で見掛けることはなく、その珍しさから日本に来たら見て帰るべきスポットとして人気が高いのだという。

 中国人観光客の「爆買い」に支えられて一息ついていた百貨店が、インバウンドが一段落したことによって計画見直しを迫られている昨今も、ドン・キホーテはほとんど影響を受けていない。当たり前だが、高級ブランド品の本物が自国内や越境ECなどによって手に入るようになれば、遠い日本の百貨店から重い荷物を持って帰る人は減るに決まっている。だが、ドン・キホーテに来店する目的はその店舗空間を体験するということなのだから、訪日外国人の数自体が増加基調である状況下で、客数が減少する理由はない。オンリーワン業態であるドン・キホーテにとっては、インバウンドの恩恵は今後も大きな成長余地として残されているのである。

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