閉店に追い込まれた温浴施設が若者から大人気になった理由おふろcafe誕生秘話(2/4 ページ)

» 2017年06月29日 06時00分 公開
[鈴木亮平ITmedia]

ターゲットを年配男性から若い女性に

 山崎社長が温泉道場を起業したのは2011年。もともとは、経営コンサルティングを手掛ける船井総合研究所で温浴施設の経営支援に携わっていた。温浴施設を担当してから4年目のとき、埼玉県にある温浴施設のオーナーから「山崎さんに経営を引き継いでほしい」と声を掛けられたことをきっかけに起業した。

 おふろcafe utataneの前身となるスーパー銭湯を譲り受けたのはその2年後。起業時に引き継いだ1店舗目の売り上げを伸ばした実績を評価され、譲渡の話を持ちかけられた。

 しかし、そのスーパー銭湯は課題が山積みだったという。

 「当時、そのスーパー銭湯は集客に苦労し、赤字が続いていました。理由としては駐車場が狭かったことに加え、周辺の競合店と比べて浴室が狭く、お風呂の種類も少なかったことが挙げられます」(山崎社長)

 まずは、商品のメインである浴室を改修する必要があった。しかし、予算は限られており、浴室の改修に費用をかけても競合施設と同じ程度のクオリティーにしか改善できない。正攻法で勝負しても競合に勝てる望みは薄かった。

 そこで山崎社長は、男性中心だった顧客ターゲットを思い切って女性にシフトすることを考えた。

 山崎社長によれば「男性は女性に比べて、浴室の広さやお風呂の種類に強いこだわりを持っているが、それに対して女性は『雰囲気』を重視する傾向がある」という。それならいっそ、浴室の改修には手を出さず、予算を共有スペースなど、浴室以外の空間に重点投資することで女性ユーザーを集めようと決断したのだ。

 「浴室で勝負せず、空間で勝負すれば、うまくいくかもしれない。そこに賭けてみようと考え、施設を譲り受けることにしました」

photo おふろcafe utatane館内。空間に投資することで女性ユーザーを集めようと考えた

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