東急の“時差Biz特急” 多摩田園都市通過の本気度杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)

» 2017年06月30日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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時差Bizライナーの今後、他路線の時差Biz対応に注目

 ところで、時差Bizライナーの名前の由来となった「時差Biz」は、小池百合子都知事が選挙公約で掲げた“満員電車ゼロ”の取り組みの1つだ。公式サイトがあり、参加企業にはJR東日本のほか、都内に路線を持つ大手私鉄などが参加している。一覧すると、すでに実施中、あるいは発表された施策ばかりで、時差Bizの呼びかけに応じた施策は少ない。

 その中で時差Bizライナーは新施策であり、名前を冠しているところからも象徴的な案件となる。しかし、ダイヤを見れば前述の通り、都内の停車駅は渋谷駅だけ。神奈川県内各駅からの乗客に対するサービスになっている。なんとも皮肉な形だ。これで都民は救われるだろうか。朝の準急の乗客が時差Bizライナーに移行してくれたら、少しは世田谷区民が満員電車から解放されるかもしれない。しかし、ハッキリと混雑緩和を感じるためには、1本の増発では足りないだろう。

 時差Bizライナーがどれだけ乗客を集められるか。他の列車の混雑緩和と遅延解消の一助になれば成功といえそうだ。8日間の運行でその兆しが見えたら、次のダイヤ改正で時差Bizライナー、あるいは特急の定期列車化が見えてくる。かつて田園都市線では、朝ラッシュ時の急行を取りやめ、地下線内各駅停車の準急とした。急行への人気集中を分散し、遅延と混雑を解消するためだった。このときも大きな話題になった。

 しかし、いまも田園都市線の遅延は頻発しており、新たな改革が必要だ。その試金石が時差Bizライナーといえるだろう。東横線のS-TRAINで座席指定列車の経験も積んだ。次期田園都市線主力車両として発表された2020系電車に、もしかしたら座席転換機能を付けて、田園都市線の座席指定通勤ライナーも誕生するかもしれない。首都圏で“○○ライナー”という列車名は座席指定通勤列車の代名詞ともいえる存在だ。そう考えると、時差Bizライナーの命名も意味深ではある。

 時差Bizのキーワードで、東急電鉄と東京メトロが新たな施策を打ち出した。時差出勤者に特典という施策から踏み込んで、列車の新設定・増発という積極策だ。今後、他の時差Biz参加鉄道事業者は、どんな新策を打ち出せるか。それが真に都民にとって幸せな結果になるよう期待する。

photo 東京都の時差Biz公式サイトには、各鉄道事業者の施策一覧と詳細へのリンクがある
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