トランプの暴言を止めることができない、お手上げの理由世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2017年07月06日 07時10分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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まだまだ暴言や暴挙が続く

 批判されてもとにかく大手メディアをフェイク(偽物)だと叩き続けるというトランプのやり方は、不思議なことに、機能している。米NBCテレビとウォール・ストリート・ジャーナル紙の調査によれば、「メディアはトランプ政権の問題点を大げさに報じているか」との問いに、全体で53%が賛同しており、共和党支持者に至っては89%にも上っている。要するに、米国民の多くはメディア以上にトランプにより賛同していることになり、この結果はトランプがメディアを叩くことで支持固めに成功していることを意味する。怪しい主張もしつこく繰り返せば、それを信じてしまう人も多いということか。

 これは米国にとっては由々しき事態だ。こうした傾向によっていったい何が起きるのかというと、トランプ支持者を中心に、メディアの信頼性は落ち、存在価値すら脅かす事態になりかねない。またトランプや政権に記者会会見などで直接的なアプローチが日常的にできなくなるために、メディアによるチェック機能が働かなくなる恐れもある。そうなれば、結果的に国民の知る権利がないがしろにされてしまうのである。さらに言うと、前出の調査結果のように、トランプがツイートで主張し続けることを多くが信じてしまう可能性もある。

 トランプの支持率は、6月を見ると38〜39%で推移しており、不支持は54〜56%をウロウロしていた。就任からこれまでの最高の支持率は就任から6日後の47.8%で、おそらくトランプ大統領誕生という悪夢の景色を前にしてゆっくりと目を開いてみたら、なんとか大統領としてやってくれそうかもしれないと、過去最大数の人が感じたタイミングだったのだろう。だがその直後に、イスラム諸国からの渡航を停止する大統領令に署名したため、多くの人々が「やっぱりか」と意気消沈し、一気に支持率は急降下した。そしてその後、支持率は浮上しないままだが、一方で繰り返される暴言のたびに支持率がさらに激しく落ちるということもない。ちなみにジョージ・W・ブッシュ大統領は最低支持率が22%だった。

 トランプ政権はまだ先が長い。とにかくトランプは、メディアを標的に暴言を吐いたりして支持層にアピールし続けるしかない。そうすれば少なくとも2018年の中間選挙までは自分のペースややり方で走り続けることができるだろう。

 ただそれまで、まだまだ暴言や暴挙が続くことになる。中間選挙までどれだけの人がトランプの口撃の餌食になるのか、見ものである。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。


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