小学生の全国大会はすべて計算通りのストーリーで、最初に翼や岬がいる南葛SCが、日向小次郎の明和FCに負けたのは、「サッカーという競技が野球のトーナメントなどと違って、敗者復活があり、そこから優勝できるチャンスがあることを読者に説明したかったから」だと高橋さんは述べる。そして日向に決勝で借りを返して優勝するというのは筋書き通りだった。
ところが、中学生編ではキャラクターの成長によってストーリーが途中で変わってしまったのだ。当初は中学3年生の全国大会で翼率いる南葛中に優勝させる予定だったが、「日向が頑張っていたので、途中で両校優勝させることに変更しました」と高橋さんは明かす。両校優勝どころか、翼が日向に負けることも考えたそうだ。大会中に日向はチームを離れるのだが、それも計算外で、日向のキャラクターが激しくなりすぎた結果だという。
キャラクター各々の個性が強くなったことによる悩みもあるそうで、新しいキャラクターを登場させて、それを際立たせようと思っても難しいのだという。「例えば、井川岳人という新キャラクターを日本のディフェンスの柱にしようと描いていても、読者は古くからのキャラクターである次藤洋に思い入れがあって、なかなか追い越せないのです」と高橋さんは苦笑する。
ちなみに、高橋さん自身がお気に入りのキャラクターは、海外選手だとリバウールを挙げる。バルセロナでは翼の同僚で、現在連載中のオリンピック編ではブラジル代表として日本代表と敵対する。また、新しいキャラクターではスペイン代表のミカエルに興味を持っているそうだ。
高橋さんにとってキャプテン翼はライフワークだ。「とりあえず今はオリンピック編を書き切りたいという思いがすべてで、それから先のことは白紙」だと言うが、例えば、原画展など今後もさまざまな形でキャプテン翼という作品にかかわっていくことは間違いない。
「キャプテン翼が世界中の人たちに愛されているのは、サッカーというスポーツのおかげであり、翼をはじめキャラクターたちのおかげ。彼らに感謝しています」。こう語る高橋さんの表情は、作品の中でサッカーボールを追いかけてピッチを走り回る、純粋な心を持ったキャラクターたちと重なって見えた。
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