“車を愛する同志” トヨタ・マツダが提携で目指す未来会見内容を詳報(1/2 ページ)

» 2017年08月05日 10時30分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 トヨタ自動車とマツダは8月4日、資本・業務提携を結ぶと正式発表した。トヨタがマツダ株式の5.1%を、マツダがトヨタ株式の0.3%を取得する。両社がこれまで築いてきた技術力を組み合わせて事業基盤を強化し、持続的な成長を実現する体制を整える狙いがある。

 トヨタの豊田章男社長は、提携の理由について「両社の『車を愛している』という理念が一致したことが大きい。マツダは『車を愛する同志』と考えている。業務提携自体は2015年から行っているが、この2年間でお互いの強みをあらためて認識した。今後は資本提携によって関係性をさらに強化し、より良い車を作っていきたい」と話す。

photo トヨタの豊田章男社長=左、マツダの小飼雅道社長=右

 両社は今後、米国で完成車の生産合弁会社を設立するほか、電気自動車の共同技術開発を推進していくとしている。

米新会社は年間30万台を生産 トランプ氏の発言は「無関係」

 米国での生産合弁会社は、2社合計で年間約30万台規模の生産能力を持つ予定。生産設備には総額約1770億円を投資し、21年頃の稼働開始を見込む。両社の製品は個別のラインで製造する予定。

 マツダは合弁会社で、北米市場で新たに導入するクロスオーバー車種を製造する方針。マツダの小飼雅道社長は「車を効率的に製造して短時間で納品し、現地の顧客に喜んでもらいたい。工場では、トヨタと合わせて現地の人材を4000人程度雇用して経済を活性化したい」と話す。

 トヨタは北米市場向け「カローラ」の生産を行う予定。将来的には、電気自動車(EV)をはじめとする、異なるセグメントの車種の製造も検討しているという。

photo トヨタは「カローラ」を製造する方針だ

 トヨタの豊田社長は「19年からカローラの生産を予定していたメキシコのグアナファト工場では、ピックアップトラック『タコマ』の製造に切り替える。トヨタの北米向け事業では、メキシコと米国を合わせて、年間40万台を製造したい」と話す。

 ドナルド・トランプ米大統領はトヨタのメキシコでの生産計画を批判し、米国での現地生産を求める発言をしていたが、豊田社長は「合弁会社の設立は、トランプ氏の意見に影響を受けたわけではない」とした。

photo 米トランプ大統領の批判は無関係という(=同氏Facebookページより)

「コモンアーキテクチャ」「TNGA」の強み生かしてEV開発

 EV事業において、両社はさまざまな車種に対応するプラットフォーム(車台)の共同開発に注力する予定。プラットフォーム完成後は、長期的な視点で商品をまとめて企画する「一括企画」、多岐にわたる車種を一括生産する「コモンアーキテクチャ」など、マツダの手法を取り入れて大量生産を図る方針だ。

 EV開発の展望について、マツダの小飼雅道社長は「現在のEV市場はまだ創成期で、さまざまな規制が存在する。今回の資本提携によって、今後の状況が予測しづらいEV市場においてもフレキシブルに対応できる体制を築き、競争力のあるEVの基本技術を開発したい」と話す。

 「マツダの製造手法とトヨタの車作りの方針『TNGA(Toyota New Global Architecture)』をうまく融合させつつ、互いに議論を重ね、切磋琢磨しながら基本技術を開発したい」(小飼社長)という。

photo 「TNGA」も生かすという

 豊田社長は「両社の混成チームで、軽自動車、乗用車、スポーツタイプ多目的車(SUV)、小型トラックなど幅広い車種のEVを開発していきたい。現在のEVは、バッテリーの充電に時間とコストが掛かる点や、乗り心地が均質で車種ごとの特徴を出しづらい点などの課題があるが、今後は乗り心地の差別化に基づくブランディングにも挑戦したい」と話す。

 豊田社長は「近年の自動車業界は、米Google、米Apple、米Amazonなど異業種が参入し、大きく状況が変わっているが、われわれは自動車会社の原点に立ち返り、良い車を作っていきたい。未来の車を、他製品との差別化が難しいコモディティーにしたくない」と決意を新たにした。

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