5月10日、トヨタ自動車は2017年3月期通期の決算発表会を開催した。まずは大外の枠組みから徐々に詳細な説明へという流れでレビューしていこう。
5年振りの減収減益である。良かったのか悪かったのかと言えば、「結果が全て」という見方の中では悪かったということになるのだろう。売上高が落ちて、営業利益も減った(図1)。数字を追ってみる。売上高は27兆6000億円。営業利益が2兆円。それぞれ前期に比べてマイナス2.8%、マイナス30.1%となった。
しかしクルマは売れている。こちらは前年の868万1000台から897万1000台へと伸ばしている(図2)。となれば、クルマが売れているのになぜ減収減益なのかが問題の焦点になってくる。
増減の要因は図3を見れば分かる。マイナス要因は、為替変動の9400億円と経費増加の5300億円。この2つが原価改善によるプラス4400億円と営業によるプラス2100億円を飲み込んで、営業利益を前年比マイナス30.1%にしているのだ。
現実的な話として、為替は天災みたいなもので、企業努力ではどうにもならない。仮に前年から次年度の為替が円高に振れることが分かっていても打てる手はほぼない。長期的なトレンドであれば、国外生産を増やす手があるが、それは工場建設という途方もない先行投資と長い準備期間が必要であり、年単位の調整のために取れる手段ではないからだ。
もちろん内外生産比率をうまくバランスさせれば、相互に損得をある程度打ち消して為替変動の影響をニュートラルに近づけることはできる。しかしながら、生産はともかくとしても、主たる開発拠点や管理部門が日本に集中することは変えられないし、加えて生産拠点を増やすことによる維持費や運営費の増加、カントリーリスクを織り込んで余りあるかと言えば、それはそう簡単な話ではないのだ。
決算発表の談話の中で豊田章男社長は、「今回の決算は、為替の追い風も向い風もない中で、まさに現在の等身大の実力が素直に表れたものだと感じております」と発言しているが、マイナス要因の約3分の2が為替要因であるにもかかわらずそう表現しているのは、比較対象となる前年の為替が強い追い風によるできすぎであり、豊田社長自身の言葉によれば「追い風参考記録」であったためである。
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