中国版フィンテック、平安保険の戦略4億人の金融ビッグデータ(3/4 ページ)

» 2017年09月06日 06時30分 公開
[片山ゆきニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所

ネット金融の顧客の23%が生命保険へ加入

 では、ネット金融は、どのような波及効果をもたらしているのであろうか。

 平安保険によると、まず、原動力となっているのが、顧客数の大幅な増加である。

 16年末時点で、平安保険グループの個人顧客数(契約実績などあり)は前掲の通り、前年比20.2%増の1億3107万人であった。16年の新規個人顧客3842万人を見ると、ネット経由が22.3%(前年比44%増の857万人)を占め、その構成比は年々大きくなっている(図表3)

図表3 16年の新規個人顧客のチャネルと各事業の顧客数 図表3 16年の新規個人顧客のチャネルと各事業の顧客数

 加えて、各事業の顧客数を見ると、ネット金融やネット保険などを中心としたその他の顧客数が1779万人と最も多く、保険、銀行、投資(証券)といった既存の金融事業と、ネット金融などを中心とした新たな事業間の相互利用や、複数のサービスの利用も見られる。

 平安保険が発表した16年上半期(1〜6月)の状況によると、グループ内の金融サービスにおいて、ネット金融、既存の金融業務の両方を利用している顧客数は15年末よりおよそ1300万人増加の7865万人で、顧客総数の2割を占めた。両方を利用するユーザーの特徴として、2016 年上半期の金融商品等の平均契約件数は2.31件で、既存金融業務のみの顧客の2.16件よりも多い。

 また、ネット上のサービスの平均利用件数は14年末時点の1.65件から2.44件まで増加するなど、ネットを介したサービスの利用意向が高くなっている(図表4)

図表4 平安保険のネット金融サービス・既存金融業務の顧客数 図表4 平安保険のネット金融サービス・既存金融業務の顧客数

 ネット金融の商品やサービスと、保険や銀行といった既存の金融商品を相互に利用する顧客が増加する中で、重ね売り(クロスセリング)の効果も少しずつ出始めている。

 ネット金融の顧客のうち、どれくらいが生命保険に加入したかについて見てみると、16年上半期では、ネット金融の顧客のうち23%が生命保険に加入したことが分かった。ネット金融は、顧客の規模がまだ小さいものの、新規顧客が急増しており、今後を考えると、そのインパクトは大きいと言えよう(図表5)

図表5 顧客をベースとしたクロスセルの効果(16年上半期) 図表5 顧客をベースとしたクロスセルの効果(16年上半期)

Copyright © NLI Research Institute. All rights reserved.