今年は船舶の衝突事故が相次いでおり、社会の注目が集まっている。他方で、船の安全管理や航行管理のために衛星インフラの活用が着々と進んでいるのをご存じだろうか。
米国の駆逐艦と民間のタンカーやコンテナ船が衝突事故を起こしたというニュースが何度も報道されており、航行の安全などが改めて注目を集めている。一般的に洋上を航海する船同士の安全管理や港における船の運行管理などに活用されているのがAIS(Automatic Identification System:自動船舶識別装置)と呼ばれる信号だ。
AIS信号には位置情報、対地進路、対地速度、船首方位などの動的情報、コールサイン、船名、IMO(International Maritime Organization)番号、船の長さや幅などの静的情報、さらには危険貨物(種類)、目的地、到着予定時刻などの航海関連情報が含まれている。2002年に改正されたSOLAS条約(海上における人命の安全のための国際条約)で一定の基準を満たす船舶へのAIS搭載が義務化されており、全世界で13万隻以上に搭載されているという。
通常こうしたAIS信号は船と船、あるいは船と沿岸部に設置されたAIS陸上局との間でやり取りがされているが、陸上局から検知できない海域や、水平線より遠い海域なども含めた全海域のAIS信号を衛星でモニタリングする取り組みが進んでいる。その分野の世界最大手企業がカナダのオンタリオ州に本社を構えるexactEarthだ。
exactEarthは2009年設立されたAIS関連情報サービス企業であり、16年の売り上げは1890万カナダドル(約16億8300万円)だ。同社が第2世代のサービスとして現在進めているのが、「exactViewRT(RealTime)」と呼ぶ、全世界のAIS関連情報をほぼリアルタイムで提供するサービスだ。そのために必要となる衛星インフラは他社との提携で構築を進めている。
具体的には、米Iridium Communicationsが配備を進めている次世代通信衛星システム「イリジウムNEXT」に「exactViewRT」サービスを行うためのペイロードを載せる。このペイロードの設計、製造、運用を行うのが通信・情報企業の米Harrisだ。すでに4機が運用されていたが、8月末に新たに5機が加わった。
18年を目標に全部で約60機を配備、イリジウムNEXTの特徴である衛星間通信も活用して、リアルタイムサービスを提供する計画だ。また同社は、7月に地上ネットワークによるリアルタイムAIS情報提供を行っている独FleetMonと提携、両社のサービスを組み合わせることで衛星および地上ネットワーク一体型の情報サービス提供を目指している。
情報のリアルタイム性以外にも特徴がある。Webサービスとして提供されている「ShipView」では全世界の船舶情報が一覧できるだけでなく、顧客企業が独自に設定可能な検索機能やフィルタリング機能などが用意され、他アプリケーションへの統合も可能だ。さらには、特定の条件を設定して自動アラームを上げる異常検知機能も提供される。なお日本ではIHIジェットサービスが販売代理店契約している。
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