日本でも変わりつつある食品スーパーの常識繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(2/3 ページ)

» 2017年09月13日 06時30分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

日本のスーパーにも変革の兆し

 イータリーのような食品売り場と飲食を融合させた店は海外企業だけの特権かと言えばそうでもありません。日本の大手スーパー各社も続々と店内に飲食スペースを導入しています。

 業界最大手のイオンリテールは、イオンの食品売り場内に50席以上のイートインスペースを、これから3年かけて150店舗に導入していきます。イオンは東京・目黒の「ダイエー碑文谷店」をリニューアルした際には、おしゃれなカフェやワインバーを設けるなど、飲食スペースの導入を積極的に進めて話題になりました。

 しかし、今後開発を進めるのはイートインスペースを食品売り場の中に作るということで、いわば、食品売り場にフードコートがドッキングした形です。その実質的な第1号店と言っていいのが「イオン新浦安店」です。17年5月にリニューアルオープンした同店1階食品フロアを「イオンスタイル」にし、売り場面積を1.3倍、惣菜売り場を1.5倍に拡大させました。また、生鮮売り場のすぐ隣に150席のイートインスペースを設置。ワインやクラフトビールを楽しめるバルもその隣にあります。

イオン新浦安店の青果売り場のすぐ隣にある150席のイートインスペース イオン新浦安店の青果売り場のすぐ隣にある150席のイートインスペース

 同店は1990年にオープンした「ダイエー新浦安店」が原型。当時は「ショッパーズ新浦安」という駅前型のショッピングセンター(SC)内の核店舗として有名でした。しかし環境は変わりました。ダイエーがイオンに吸収され、40代の子育てファミリー中心だった客層が、65歳以上の高齢者層へと変化し、従来の売り方だけでは集客できなくなりました。

 同店ではリニューアルにあたって周辺の消費者ニーズを徹底的に調べました。「家族で楽しめる飲食スペースがほしい」、「デパ地下のような売り場がほしい」、「こだわりのワイン」、「新鮮な生鮮や少量パック」などのニーズがあることを知り、食品売り場を拡大して店内に飲食サービスやイートイン機能を充実させたのです。

デパ地下のような惣菜売り場を新たに導入 デパ地下のような惣菜売り場を新たに導入

 結果的に、生鮮売り場では鮮魚や畜肉の対面販売を強化。グロサリーではオーガニック商品などを導入し、まさに食を体験、体感する売り場へと変革しました。これにより売り上げは10%以上の増加。今後、食品売り場では20%以上のアップを狙っています。

 この動きはイオンだけにとどまりません。イトーヨーカ堂は16年に東京都心部の新宿富久店に大型のカフェを導入。店内で調理されたピザや惣菜などを食べながら珈琲を飲めるスペースを作るという新業態店を開発しました。埼玉を地盤とするヤオコーや、広島を拠点に成長を続けるエブリイも惣菜コーナーの強化と大型のイートインスペースを積極的に導入しています。また関東を中心に店舗網を拡大しているEDLP(Everyday Low Price)型の食品スーパーであるオーケーも店内飲食用のメニューを開発したり、直営の外食店を開いたりする予定です。

 なぜこのような動きが活発化してきているのでしょうか。そこには2つの理由があるようです。

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