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成長の条件に「CFO」が必要になった理由企業経営の柱、財務戦略を読み解く(1/3 ページ)

» 2017年09月19日 06時00分 公開
[鈴木亮平ITmedia]

特集「経営者を支える“財務のプロ”」:

ビジネスを大きくして、会社を成長させていく。その実現に欠かせないのが財務戦略だ。本特集では、日本でも重要なポジションとして認識されつつある最高財務責任者(CFO)の役割や求められるスキルを明らかにする。また、事業拡大や新規上場を通じて成長している企業の取り組みを探っていく。


 成長し続ける強い企業には、実際の業務遂行に責任を持つCOO(最高執行責任者)や、テクノロジー面で経営をサポートするCTO(最高技術責任者)など、CEO(最高経営責任者)を支える、優秀なリーダーたちがいる。

 その中でも特に成長のカギとなるのが、財務面でCEOを支えるCFO(最高財務責任者)の存在だ。

 CFO人材を育成する「NEXT CFO アカデミー」の運営会社であり、経営コンサルティング事業などを手掛けるエスネットワークスの須原伸太郎社長によると「この十数年で、CFOの確保が最重要課題だと捉えているCEOが増えてきている」という。

 なぜ、CFOが重要視されるようになってきたのか。企業の成長において、どのような役割を果たすのか。同社の須原社長に話を聞いた。

photo CFOの重要性が高まっている理由とは?

企業経営にはCEOとCFOの「経営者コンビ」が必要

――CFOとは、企業のおいてどのような存在なのでしょうか

須原: 日本ではCFOという言葉自体、まだまだ浸透し始めたばかりなので、単に財務部門の責任者であると認識している人も多いかと思います。しかしCFOは、いわゆる中間管理職ではなく、財務や経営管理の高い専門知識を武器に戦略を立案し、社長と共に事業を推進する「もう1人の経営者」なのです。

 また、経営者であると同時に、市場(投資家)とコミュニケーションを取り、資金調達を行う専門家でもあります。経営を財務面から支える“CEOの相方”として会社を共に経営していくのがCFOの役割です。

――なぜ、CFOが必要とされるようになったのでしょうか。

須原: 一番の要因は、金融機関からの資金調達が厳しくなったことです。1990年代前半までは、資金調達をする場合のほとんどが金融機関からの融資でした。バブル経済が崩壊するまでは景気が良かった(土地の価格が上がり続けていた)ので、金融機関は土地を担保にどんどん企業にお金を貸していました。この時代は、社長や財務担当者が金融機関としっかり信頼関係さえ作っていれば、そこまで苦労せずに資金調達ができていたのです。

 しかしバブル経済が崩壊し、今まで担保としていた土地の価格は一気に下落。企業が新たに銀行から融資を受けることが難しくなりました。金融機関はハイリスクな投資はしません。企業の将来性よりも、貸したお金が高い確率で戻ってくる経営状態の企業に融資します。

 こうした状況の変化もあって、特にベンチャー企業の場合は、別の手段で資金調達をする必要が出てきました。つまり、いかに投資家から資金を調達するかが求められるようになってきたのです。潤沢な資金を得られなければ事業を飛躍させることはできませんので。

 ただ、金融機関と投資家では、求められるコミュニケーションが根本的に異なります。銀行に対しては安定した財務状況、財務計画の説明ができていればよかったのですが、投資家に対しては、自社のいるマーケットの成長性や競争優位性を経営戦略、財務戦略に落とし込んで説明し、将来的に「大きな投資リターンを生み出すことができる」ことをアピールしなければなりません。

 そのため投資家からの資金調達は、経営に関する知識やリーダーシップを発揮できない(経営方針に決定権を持たない)中間管理職の財務担当者では難しいのです。

 そしてCEOも、財務における専門知識を持ち合わせていないケースがほとんどです。そのため、資金調達の役割も担うとなると、ある程度の財務知識を付ける必要が出てきます。

 しかし、事業を回しながら経営戦略を考え、財務知識も勉強して、投資家と良好な関係を維持しながら資金調達をする――このように全ての仕事をCEOがこなすには限界があります。これでは本来集中するべきである「経営戦略」に集中できません。

 だからこそ、漫才コンビと同じようにお互いの強み、役割を明確に分けたボケ(経営戦略)とツッコミ(財務戦略)の“経営者コンビ”が必要になってきたのです。

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