ツインバード工業社長、V字回復までの“苦悩”を語る赤字から躍進へ(4/5 ページ)

» 2017年11月01日 06時00分 公開
[夏目人生法則ITmedia]

二羽の鳥が舞う日

 人は、一生懸命働きたいか、できるだけ手を抜きたいか。実は多くの人間が、懸命に働きたいと思っている。マズローの五段階欲求説によれば、人間は安全、衣食住の充足、さらに「どこかに所属したい」という思いを持つという。その次が「認められたい」、最後が「自己実現」だ。すなわち、懸命に働いたほうが、自分の要求は満たされる。

 不満がなく、自分の働きが正しく評価され、将来のビジョンが見えれば、人はけなげに、懸命に働くのだ。野水社長の改善の結果は、すぐ表面化したという。

 「物流センターの改修後、なんと、驚くほど作業効率が上がったのです。仕事量は変わってないのに、4〜5人分、余力ができてしまいました。私はこのマンパワーをコールセンターに補充しました。当社のコールセンターはコスト削減の結果、電話がつながりにくくなっていたんです」

 『ツインバード』の由来は『お客様の喜びが私たちの喜び』というものだった。だからマークに、二羽の鳥が空を舞う姿を描いていた。

 「でも、当時はこれが“うそ”になっていました。お客さんの声を直接聞くコールセンターが、つながりにくかったわけですから。それでは社員が誇りを持てません。私は、自分に能力があるかは分かりませんが『うそをつかない』とだけは決めています。せっかく余力ができた人的リソースをコールセンターに使うのか、という批判もありましたが、そこは何とか周囲を説得し、コールセンターがワンコールで反応する率(受電率)を80%まで高めました。すると、スゴいことが起こったんです」

 コールセンターの社員が自主的に、お客さんの声、悩み、要望を開発側にフィードバックし始めたのだ。開発陣は「売りっぱなし」だった商品の評価を耳にし、好評価は素直に喜び、顧客の悩みを改善しようと考え始めた。

 並行して、野水社長は美術大学や技術系の大学院の研究室に出向き、自ら「20代の社員に商品開発を任せたい」と優秀な学生を口説いて入社させていた。また、優秀ながら大手メーカーから離れざるを得なくなった人たちも、三顧の礼で迎えていた。

 そして、次の一手が業績改善の起爆剤となった。

photo 本社に併設されたショールーム

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