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» 2017年11月14日 08時00分 公開

スピン経済の歩き方:中国メディアが指摘する「日本は改ざん文化」は本当か (5/5)

[窪田順生,ITmedia]
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「謙虚さ」を失った社会は「暴走」する

愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(著・窪田順生/さくら舎)

 日本社会はこれまで「反日マスコミ」のおかげで自虐史観だったから、これでようやくバランスがとれたみたいなことを言う人もいるが、砂糖を入れすぎた料理が塩を入れて味が戻らないように、行き過ぎた「自虐」は、行き過ぎた「自画自賛」でチャラにできるものではない。

 人気マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』のファンならば常識だが、ナチスドイツのシュトロハイム大佐という登場人物がいる。

 自らを「誇り高きドイツ軍人」と自画自賛して、サンシャイン池崎のように「ドイツの技術は世界一ィィィィ!」と絶叫して戦うというキャラなのだが、ネットでは少し前まで日本社会の行き過ぎた「自画自賛番組」をやゆする時にもつかわれた。

 マンガとはいえ、なぜナチスの大佐の言動と、現代日本でもてはやされる「論調」が似ているのかというと、これにはちゃんと理由がある

 実はシュトロハイムの「世界一ィィ!」のベースにはナチスの「優生学」がある。これは戦前の日本でもわりと広まっていて、その旗振り役のひとりが、朝日新聞の副社長だった下村宏という人物だった。

 そのあたりの経緯は詳しくは先ほどの拙著をお読みいただきたいが、朝日新聞は戦前、戦中は「極端な愛国心」をふりまく「愛国新聞」だった。それは軍に脅されて仕方なくやっていたのであって、マッカーサーが来たことでそんな性格はガラッとリセットされました、というのが朝日の言い訳だが、戦後日本をつくったのが戦前・戦中世代であり、終身雇用制度や国民皆保険など社会のいたるところに戦前のシステムが踏襲されていることからも分かるように、朝日新聞も戦前をひきずっている。それは「極端な論調」である。実際、戦前、戦中のマスコミによく触れまわられた「日本人の手先は世界一器用」「日本の自然は世界一美しい」「日本の電車は世界一」などは70年を経た現代の「自画自賛番組」や「自画自賛本」で触れまわられている内容とほぼ変わっていない。

 つまり、「愛国」と「反日」はぶれている方向性が異なるだけで、「極端な論調」という意味ではルーツがまったく同じなのだ。このあたりは機会があれば、またこの連載で述べたい。

 人類の歴史を振り返れば、客観的かつ冷静に自分を見つめることができる「謙虚さ」を失った社会というのは往々にして「暴走」を始める。

 中国なんかに「改ざん文化」なんて言われて腹がたつという気持ちは分かるが、ここらで冷静になって「改ざん」が平常運転になっている事実を受け入れ、その理由を日本社会全体で考えてみるべきではないのか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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