物事には全て「副作用」がある常見陽平のサラリーマン研究所(2/2 ページ)

» 2017年11月17日 06時00分 公開
[常見陽平ITmedia]
前のページへ 1|2       

「働き方改革」は副作用だらけ

 自分の専門分野の話になるが、この副作用が顕著なのが「働き方改革」である。この言葉は今年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補にもノミネートされた。その他にも「プレミアムフライデー」や「人生100年時代」が入るなど、働き方改革が話題なった。

 もっとも、これらの言葉について首を傾げてしまう人もいることだろう。言葉の上滑り感があり、コンセプトと実態が乖離(かいり)しているからだ。

 例えば、「残業を減らせ」と号令をかけただけで、かえって忙しくなったり、サービス残業をせざるを得なくなったり、売り上げダウンにつながってしまっては本末転倒である。副作用そのものではないか。

photo 「働き方改革」にも副作用がたくさん

 「プレミアムフライデー」に関しては、このコラムでも何度か批判してきたが、忙しい月末の金曜日の午後3時に退社するのは、無理筋である。何より副作用が気になる。サービス業でますます忙しくなるだろうし、大企業が早く帰ろうとすると、彼らの仕事を請けている中堅中小企業にしわよせがいく。

 消費喚起策だというが、結局はパイの奪い合いになってしまい、かえって単価が下がってしまう可能性だってある。

 「人生100年時代」も同じである。長寿化が進んでいること、社会保障の不安があることなどの理由から認めざるを得ないようなコンセプトではあるが、結局、一生働かなくては個人も社会も回らないということを示しているようにも見えて憂鬱になる。

 こうした「働き方改革」への副作用に対する怒りが爆発し、私は盟友おおたとしまさ氏との対談を書籍化した。それが『働き方改革の不都合な真実』(イースト・プレス)だ。安倍晋三首相が「最大のチャレンジ」と呼んだこの取り組みを斬りまくっている。「我々は何年、少子化対策を叫び続けているのか」「日本の労働生産性が低いのはなぜか」などツッコミまくっている。

 副作用についてよく分かる本なので、ぜひ手に取っていただきたい。皆さんも副作用には気をつけよう。フライドチキンもポテトもおいしいが、食べ過ぎると太る。例えばそういうことだ。

常見陽平のプロフィール:

 1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。

リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』『エヴァンゲリオン化する社会』(ともに日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『普通に働け』(イースト・プレス)など。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.