――それぞれ担っていたお金の管理を集約するなど、本社主導の取り組みを進めるためには、グループ内で意識を統一させることが重要になると思います。うまくいっているのですか。
M&Aで取得した会社は、上場企業ではない投資ファンドがオーナーだったところが多く、ガバナンスに対する意識にずれがありました。上場企業には透明性、説明責任が求められますが、投資ファンドの下で育ってきた企業は、短期の利益や目先のキャッシュを重視する傾向がありました。まずはガバナンス教育、価値観の共有から。マネジメント方法や規定を統一する重要性などを繰り返し伝えています。
その手段の1つがグローバル会議の開催です。財務、経理部門の責任者が一堂に会し、業務の方針や考え方を確認します。責任者の下にいる会計や業績管理などの担当者ごとに集まる会議もあります。年1回の全体会議に加えて、資金管理や税務、内部統制など、細かい業務別の会議も頻繁に開催しています。
――連結子会社だけでも200社以上あり、会社の状況はさまざまだと思います。会議で示される方針の受け取り方もさまざまではないですか。
もちろん、欧州や中国、東南アジアなどの地域によって、実績や達成できるレベルは違います。そのため、全体として大きな目標を示し、地域や会社ごとに無理のないステップで取り組んでもらっています。
過去の例では、決算期の統一や規定づくり、リージョナルトレジャリーセンターの設置などの目標がありました。その目標を目指して、小さなプロセスから達成していくのです。「What(何を)」「Why(なぜ)」を全体で議論して決めて、「How(どのように)」「When(いつ)」を地域や会社ごとに設定してもらい、実行してもらっています。
――反発などはありませんか。
本社から海外の主要子会社に派遣している責任者を、その会社の取締役に選任したときは反発がありました。責任者といってもまだ40代で、現地の経営陣と比べると若いため、社員のモチベーションが低下する、という意見があったのです。
しかし、その会社の株主として、ガバナンスを重視する姿勢を伝えて実行しました。海外進出する日本企業でよくあるのが、駐在員がお客さま扱いされて、何の情報も入ってこないという失敗です。それは防がなくてはなりません。各社の重要な意思決定の過程に携わることで、本社に入ってくる情報量が増え、監督機能を強化することができました。
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