なぜ企業で不正や不祥事が起きてしまうのだろうか。前回、「職場がヤバい! 不正に走る普通の人たち」(日本経済新聞出版社)の著者であり、数多くの企業で不正の実態を垣間見てきた前田康二郎さんに、その原因などについて解説してもらった。
今回は、そうした不正を防ぐためにはどうすればいいのか、その対策について話を聞いた。
――前回の記事で、どんな企業でも不正は100%起きてしまうというお話がありました。裏を返せば、不正を完全に防ぐことは不可能なのでしょうか。
その事実が公にならないにせよ、不正は100%どこの会社でもあるのは紛れもない事実です。その前提に立ち、「防ぐ」というよりも、「起こさせない」「不正する気にさせない」という発想が大切です。
そのためには何をすればいいでしょうか。よく「透明化」という言葉が使われますが、果たしてそれだけでいいのでしょうか。私の記憶では、かつて東芝は内部統制をしっかり行う、経営の透明化の見本としてよくセミナーなどで紹介されていました。けれども、実態は周知の通りです。
経理業務を管理するためのワークフローは必要ですが、それを運用する人間が悪ければ意味がありません。ワークフローと、それをモラルのある人が運用するという両建てでなければ、不正は起きてしまいます。
たとえワークフローがなくても、社員同士がしっかりコミュニケーションをとっていれば大丈夫だと言う人がいます。例えば、経理のAさんに迷惑がかかるから、あるいは社長に恥をかかせたくないから不正は止めようということです。けれども、不正をする人はそもそもそうした考えが頭にないですよね。だからコミュニケーションが不正を防ぐというのはそれほど効果がありません。
ワークフローとモラルある担当者、この2つを用意した上で必要なのは、ベタですがやはりダブルチェックする体制です。本来のルールであれば、経理担当者、経理部長、そして社長が印鑑を押すところを、担当者と経理部長だけでOKにしているような会社は少なくなく、私が見たところ不正をしている会社の8〜9割がシングルチェックでした。
例えば、上司と部下でも、同僚同士でも、お互いにチェックし合う。もしくは、月に1度くらい外部の税理士や社長にチェックしてもらう、そうした仕組みが不正の芽を摘むことに役立ちます。信頼しているのと、チェックしなくてもOKというのは根本的に違います。
不正を起こさせないためには、処罰の明確化も大切です。たとえ交通費を500円ごまかすのでも、数千万円を横領するのでも同じ罪。役職など関係なく一律に処分するべきです。例えば、1回目は停職、2回目は懲戒解雇といった具合です。そうしたルールを入社時にきちんと説明するのが効果的です。それとともに、会社はパブリックな場所だと認識させることです。
会社はパブリックな場所ではないと考えている人は実は多いです。例えば、会社に寝袋を持ってきて寝泊まりするとか、スーツ姿なのにサンダルをはいて仕事をしているとか、これは公共の場としてとらえていないからです。こうした緩みが不正の温床になるのです。
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