ビジネスを大きくして、会社を成長させていく。その実現に欠かせないのが財務戦略だ。本特集では、日本でも重要なポジションとして認識されつつある最高財務責任者(CFO)の役割や求められるスキルを明らかにする。また、事業拡大や新規上場を通じて成長している企業の取り組みを探っていく。
トランスコスモスという会社をご存じだろうか。グローバルネットワークを強みに、企業の海外販売やデジタルマーケティングをアウトソーシングで担い、成長を下支えしている上場企業だ。
国内54カ所、海外は30カ国に118カ所もの拠点を展開。コールセンターやオフィス業務などを請け負うビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)をはじめとして、電子商取引(EC)やインターネット広告、ソーシャルメディア活用などを支援するサービスを提供している。2017年3月期の連結売上高は2423億円と、過去最高を更新した。
グローバルに広がる事業とグループ会社をまとめ、正しく運営していくことがグローバル企業にとって大きな課題。トランスコスモスはその課題にどう対応しているのか。キーマンになるのが最高財務責任者(CFO)の本田仁志氏だ。大手メーカーで15年間財務を担当した後、CFOを目指してキャリアを積んだ。現在は取締役上席常務執行役員CFOとして、財務・経理や法務、総務、IT部門などを統括している。CFO就任までの経緯や、財務の人材育成などについて聞いた。
――キャリアのスタートは東芝だったそうですね。財務の仕事を経て、CFOになるきっかけは何だったのですか。
1990年に東芝に入社し、経理・財務部門に配属されました。15年間一貫して経理・財務を担当し、工場の原価担当から財務戦略策定まで、さまざまな仕事をしましたが、「45歳までに上場企業のCFOになる」という目標を決めて退社しました。
――CFOというキャリアを見据えていたのですか。それはなぜでしょうか。
大企業では、経営を担う役職に就くまでに時間がかかります。若いうちに成長企業でチャンスを探したいと考えていました。日本企業の経理・財務部門で働く人は、1つの会社で勤め上げるという傾向が強いと感じています。そうなると、年功序列の慣習も受け入れて淡々とキャリアを積むしかありません。
そうではなく、若いうちから好きなように経営に関わるキャリアを築きたいと考え、上場企業のCFOになるという目標を決めました。その後、入社した不動産会社の倒産も経験しましたが、05年に入社したファーストリテイリングで経営計画策定や海外グループ会社の経営管理などを担い、08年にトランスコスモスに入社しました。11年4月には、目標としていたCFOに就任しました。
――トランスコスモスでは、どんな役割を期待されていたのですか。
08年当時は事業拡大中で、M&A(合併・買収)によって海外グループ会社が急増している状態でした。それぞれの会社の管理にまで目が行き届かなくなっていたため、その業務を担うために採用されました。
しかし、入社したのが08年8月。翌月のリーマンショックにより、状況は一変しました。拡大していた事業の「集中と選択」を迫られ、撤退もありました。事業の立て直しが必要になる中で、財務や会計の業務を担っていました。東芝の経理・財務部門で、部門内のジョブローテーションによってさまざまな業務を担った経験が生きました。
現在は再び成長する段階に入っており、事業規模やグループ会社数を拡大しています。法務などを含めて、当初よりも幅広い分野を担当しながら、再チャレンジしています。
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