五穀屋のブランドコンセプトに着手してからnicoeでの商品発売まで3年という期間が用意されていたが、穀物や発酵技術を使った和菓子は想像以上にハードルが高かった。
和菓子職人にとってこれらを取り入れて菓子を作ることが日常になかったため、依頼に対し「とてもできない」と突っぱねられるところから始まった。そこを何とかして説得したものの、五穀はそのまま使うと硬いので、ほどよい歯ごたえで存在感も残しながら生菓子に生かすのに苦労した。
また、菓子である以上、おいしいことは大前提である。発酵や穀物の素材がどのように掛け合わされるのか、手探りの状態で開発に臨んだ。例えば、玉ようかん「五季(いつき)」は、しょうゆこうじや味噌、酢などの発酵素材をいかにようかんと合わせておいしく、かつ美しい発色に仕上げるか、和菓子職人は頭を悩ませたという。
さらには、仮に納得のいくものが完成したとしても、それを工場でも同じ品質で再現しなければならなかった。「わずかな温度差や時間差で菓子は大きく変わってしまいます。アイデアが形になっても、工場で量産化するのは大変だったのです」と山崎社長は述べる。
一方、商品企画担当者も雑穀と発酵の知識がまったくないところからスタートしたので、発酵マイスターなどの資格の取得を目指したのである。
プロジェクト期間中は山崎社長も毎日のように試食しては駄目出しを繰り返す日々を送ったが、「(nicoe開業日という)期限は決まっていたので、何とかそれに間に合わせるように全員で取り組まないといけないという気持ちが強かったです」と振り返る。
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