アドビシステムズは11月28日、新しい日本語フォント「貂明朝(てんみんちょう)」を発表した。「かわいくも妖(あや)しい」がコンセプトで、明朝体に「鳥獣戯画」など日本の伝統美術の要素を取り入れたという。背景が暗い場合でも視認性が高く、書籍の装丁などの見出しに最適としている。
最新の常用漢字・人名用漢字を含む約6500文字に対応。同日からアドビのフォントライブラリー「Typekit」に追加されている。Typekitとアドビのクリエイター向けサービス「Creative Cloud」の有料ユーザーが利用できる。
フォントをデザインしたアドビの西塚涼子チーフタイプデザイナーによると、貂明朝の平仮名は他の明朝体のフォントと比べて(1)先端が丸い、(2)縦横の線幅の差が少ない、(3)曲線にうねりがある、(4)懐が丸い、(5)「はらい」が長く深い――などの点が異なるという。
漢字は、上記に加えて部首「丶(てん)」がやや太く短い点が異なる。漢字の縦横比は90:92とし、かわいらしさを演出したとしている。
西塚さんは「明朝体ならではの品位と伝統を保ちつつ、かわいさを加えることに苦労した。書体設計士の鳥海修さんが主催する書体づくり教室『文字塾』に参加するなど、社外のデザイナーからのアドバイスも受けて完成に至った」と話す。
また貂明朝には、フォントのイメージキャラクターである動物の「貂(てん)」を異体字として入力できるなどの遊び心も持たせた。
「貂はフォントよりも先にデザインし、プレゼンテーションなどで『日本の伝統を保ちつつ、かわいらしいフォントにしたい』というイメージを伝える際に使用していた。社内での人気が高かったため、正式に採用した。ユーザーはぜひデザインに使用してほしい」(西塚さん)
貂明朝のデザインコンセプトをベースにした欧文フォント「Ten Oldstyle(テン・オールドスタイル)」もリリースした。通常の字体とイタリック体の2種類を設け、それぞれ4つのウェイト(太さ)が使用可能。欧文約2100文字に対応する。
文字先端部の丸みを貂明朝と統一したほか、ゆったりとした横広がりのフォルムを採用。プロポーショナル(文字ごとに文字幅が異なるフォント)と全角が同じデザインになっている点が特徴という。
Typekitのサイトデザインもリニューアル。画像の中に含まれる文字のフォントを識別するサービス「Typekitビジュアルサーチ」を実装した。
Typekit上に新設された「探してみる」というメニューを選択し、投稿フォームに画像をドラッグアンドドロップすると、アドビの人工知能「Adobe Sensei」が画像を分析。Typekit内のフォントと照合し、適合度の高いものを表示する仕組みだ。
当初は欧文フォントのみ対応し、日本語フォントの検索はできないが、街中で気になった看板をスマートフォンで撮影し、フォントを調べてデザインに取り入れる――といったことが可能になるとしている。
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