インタビュー
» 2017年12月12日 08時17分 公開

異世界転生「JKハル」:早川書房が「ネット発の官能小説」を書籍化したワケ (3/3)

[青柳美帆子,ITmedia]
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――電子書籍のみの展開もしていますよね。私の周りではSF好きやミステリ好きが多くて、よく早川書房の電子書籍短編がTwitterのタイムラインで話題になっています。

 第4回ハヤカワSFコンテスト特別賞の中篇「最後にして最初のアイドル」を電子限定で出していますね。早川書房よりも先に、東京創元社が「創元SF短編賞」の受賞作を電子書籍化し、成功を収めた事例があったんです。コンテストの受賞作ですと、長篇は単行本化、短篇・中篇は雑誌に掲載するのが通例ですが、雑誌は一般的にはひと月で市場からなくなってしまう。いつでも読めるように電子書籍でも出しておくことは意味があると考えたようです。「最後にして〜」は分量上の理由で紙の本にできなかったという事情もありましたが、受賞時にネットで話題になったので、贈賞式に合わせて拡散しやすい電子書籍で配信するのがいいのではないかという判断になりました。結果、多くの方に読んでいただけましたね。

「最後にして最初のアイドル」。紙の書籍化も決定している

――『裏世界ピクニック』(宮澤伊織)の2巻は、電子書籍で先に単話連載したのちに文庫にまとまるという、ちょっと変わった形式をとっています。

 『裏世界』は、ネット上でウワサされる怪談(ネットロア)を題材にしたホラー小説で、Webとの相性がいい作品だったのが大きいです。また、著者の宮澤伊織さんの創元SF短編賞受賞作「神々の歩法」が電子書籍でヒットしており、その読者層にリーチするという狙いもありました。

『裏世界ピクニック』2巻収録分は、電子書籍で連載したのちにまとまった

早川書房は「なろう」に参入するのか?

――『JKハル』は、Webに積極的な早川書房が“意外とやっていなかった”新しい分野への挑戦と感じました。今後、「なろう」系の小説に本格的に取り組んでいくのでしょうか?

 いまのところ、これをきっかけにバンバン出すわけではありません。先ほどもお話ししましたが、「なろう」専門レーベルを持っている他社さんにはとても追いつけないです。ただ、改めて「なろう」や「カクヨム」などの小説投稿プラットフォームには、早川書房と親和性のある作家さんがいるのだなと感じています。私はTwitterでエゴサーチをしがちなのですが(笑)、たまに「ハヤカワの編集者は○○を読むべき!」とウェブ小説をオススメしてくれている投稿を見つけると、そうした作品から読んでいます。もし早川書房の編集が読んだ方がいいという作品があれば、ぜひ教えていただきたいですね。

――一方、『JKハル』を書籍版で初めて知る読者も多いと思います。

 『JKハル』はこれまで「なろう」系に触れなかった読者にも、男女問わず楽しんでもらえる作品だと考えています。読み終えた同僚と何度も話をしたのですが、好きなキャラクターも、読んで感じたこともバラバラで、それだけたくさん切り口がある作品はいい作品だと思います。

 「異世界転生もの」は一大ジャンルになるほどさまざまな作品が出て、市場ではやや飽和してきている感があるかもしれませんが、「JKハル」は「まだこんな切り口があったのか」と驚く作品です。「なろう」系が好きな方や、「異世界転生ものか……」と思っている人にも、手に取ってほしいですね。

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