「ゲリラ・ジャーナリスト」が日本に上陸する日世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)

» 2017年12月14日 07時32分 公開
[山田敏弘ITmedia]

メディアやリベラルをおとしめようとする動き

 16年の米大統領選でも、民主党の関係者を標的にし、トランプ陣営の集会で荒らし行為をする人をわざと送り込んできたと暴露する様子を隠し撮りし、公表して話題になったことがある。また、CNNのプロデューサーが、CNNがトランプ大統領のロシア疑惑を報じるのは「視聴率のため」と発言した様子をビデオに収めて公表したケースをはじめ、何人かのCNNスタッフから、だまし討ちのコメントを取った。これに対してCNNは、「どんな意見でも個人スタッフの考えは自由で歓迎する」と答えている。

 こうしたメディアやリベラルをおとしめようとする動きを評価してか、トランプ大統領は選挙戦当時オキーフに1万ドルを寄付している。一方で、10年には、民主党議員の事務所に不当に立ち入ったとして逮捕されてたこともある。この逮捕歴によって、冒頭で触れたように、いくつかの州がプロジェクト・ベリタスの資金集めを禁じる動きを見せているのである。

トランプ大統領は選挙戦時オキーフに1万ドルを寄付した(出典:トランプ大統領のFacebookページ)

 ここでひとつはっきりさせておきたいのは、オキーフの手法はメディアがよくやる突撃取材とは違うことだ。なぜなら、嘘で相手をおびき寄せ、だましながら失言を引き出そうとしているからだ。さらに言うと、捏造(ねつぞう)に近い編集も少なくないし、左派とメディアを狙い撃ちにしているのも偏向と言っていい。

 もっとも支持者にはそんな事実は関係ないのかもしれない。学習や記憶の研究で知られる米ワシントン大学セントルイス校の著名な心理学者ヘンリー・ローディガー教授はこんなことを指摘している。「間違いだったニュースが、驚くようなものだったり、興味深いものだった場合には、その後に間違いが訂正されても、訂正された情報よりも間違った情報を覚えてしまうこともある」と。確かに、最初のセンセーショナルな報道の印象を覆すのは容易ではない。

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