キリンとメルカリに学ぶInstagramマーケティング「インスタ映え」だけじゃない

» 2017年12月15日 12時15分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 「Instagramにとって2017年は大きな1年だった」――米Facebook日本法人の長谷川晋代表取締役はこう振り返る。10月時点で、日本国内の月間利用者は2000万人を突破。「インスタ映え」が「新語・流行語大賞」を受賞するなど、社会現象になるほどInstagramの浸透が進んだ。

 原動力になったのは、17年に実装した新機能「Stories(ストーリーズ)」だ。24時間で投稿が消えるため、気軽に情報発信ができる。これまで「渾身の1枚をアップするSNS」だったInstagramが、「気軽な日常をカジュアルにシェアするSNS」の側面も持つようになった。長谷川代表は「その中で、使う人のコミュニティーが広がり、購買行動のトレンドも巻き起こった。人々にとってInstagramは身近なものになった」と話す。

社会現象になるほどInstagramの浸透が進んだ2017年。米Facebook日本法人の長谷川代表は「大きな1年だった」と振り返る

 ビジネス利用も注目され、広告主は200万を超えた。主にテレビCMを使ってマーケティングを行ってきた大企業や、成長を加速させたいベンチャーもInstagramの活用を始めている。

インスタを活用するキリンとメルカリ

キリングループでマーケティングを担当する野際陽介さん

 キリンは、発泡酒「淡麗グリーンラベル」や「午後の紅茶」のマーケティングにInstagramを活用。キリングループでデジタルマーケティングを担当する野際陽介さんは「キリンはテレビCMを使ったマーケティングを基本的に行っているが、最近ではテレビを見ない層も増えてきた。テレビCMと補完関係にあるデジタル広告も積極的に進めている」と語る。広告の接触回数(フリークエンシー)を底上げする効果もあるという。

 16年の「午後の紅茶」ブランド30周年を記念した施策では、ターゲットのセグメントを分けて届けられるデジタル広告の特徴を生かし、若年層に向けたコミュニケーションを展開。効果測定したところ、「広告を見た後に『飲みたい』と感じる人が多かった。手元で見ていて、価格としてもすぐに買いに行けるものなので、飲用意向が高い結果になったようだ。費用対効果も高かった」と振り返る。

メルカリの山代真啓さん

 快進撃を続けるメルカリも、マーケティングプランにFacebookとInstagramを組み込んだ。17年前半は「テレビCMで認知を広げ、オンラインマーケティングでダウンロードしてもらう」という方針を進め、認知とインストール数を拡大。後半は積み上げを生かし、「ダウンロードしたがまだ使っていない層に向け、出品・購入を促す」フェーズへとシフトした。そこで使ったのがFacebookとInstagram広告だ。

 特に効果があったのは、「メルカリ」アプリ内での閲覧情報をもとに、FacebookとInstagramのフィードにレコメンドを流すという広告。例えばあるブランドのワンピースを見ていたら、そのワンピースの出品情報が表示される――といった具合だ。

メルカリのマーケティングプラン。上半期はダウンロード数増を、下半期は出品・購入を促した

 「かなりパフォーマンスがいい広告。データを分析してFacebookと議論しながら、トライアンドエラーを重ねて広告を配信している」とメルカリの山代真啓さんは話す。

独特の難しさとは?

 両社とも、18年はさらにマーケティングを進化させる考えだ。

 キリンの野際さんは「17年はテレビで展開した広告をデジタルでも出稿していた。18年は、デジタル広告での『視聴態度や属性で届ける広告を変えられる』という特性を生かし、最適な広告クリエイティブを届けることにチャレンジしたい。クリエイティブの作り分けをして、お客さまの『飲みたい』を作れれば」と展望を話す。

 メルカリの山代さんもクリエイティブの強化を考えており、「ブランディングとユーザー獲得の両取りができるようなクリエイティブを作れないかをずっと考えている。それができれば広告が進化できる」という。

 共通する課題意識は、「Instagramのクリエイティブは難しい」。Instagramでは「クリエイティブを作り込まないと悪い意味で“浮いて”しまう」という特性があり、制作の労力やノウハウが独特だという。キリン野際さんが「広告はお客さまに『ウザい』と思われたら終わり」と話すように、Instagramのユーザーと親和性のある広告をいかに作れるかがマーケティングの成否を分けそうだ。

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