日本のキャッシュレス化を考える進展はいかに?(3/3 ページ)

» 2017年12月28日 07時00分 公開
[福本勇樹ニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所
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キャッシュレス決済比率の目標設定における留意点

 日本では「キャッシュレス決済比率」を民間消費支出におけるカード決済と電子マネーの決済の割合と定義されたことについて言及したが、カード決済や電子マネー以外の決済手段が含まれていない点については注意した方がよいのかもしれない。振込や口座振替による利便性が向上することで、キャッシュレス化が進む可能性もあり得る。

 例えば、モバイル端末を使用した個人間(P2P)の電子決済に関するサービスが新興国を中心に普及しているが、日本国内においても当該サービスを提供している企業がある(※4)。

 また、16年の資金決済法の改正では、仮想通貨に関する法律が整備されたが、仮想通貨の技術を用いた決済サービスについても今後発展していく可能性が考えられる。しかし、このような決済手段は日本政府により定義された「キャッシュレス決済比率」には含まれない。

 モバイル端末を用いた決済サービスについては、カード決済や電子マネーの機能を端末に搭載するような決済サービスが消費者に普及することで「キャッシュレス決済比率」が上昇していくようなシナリオも考えられるが、先に例示した「キャッシュレス決済比率」の定義に含まれないような決済手段が普及した場合は、今後「キャッシュレス決済比率」の定義の中に含むべきか議論されることになると思われる。

※4 銀行以外の業者がP2Pの電子決済サービスを提供する場合、日本では資金決済法における資金移動業に相当すると考えられる。銀行等以外の業者であっても、100万円に相当する額以下の為替取引であれば業として営むことができる。このとき、10万円以上の送金・受け取りを行う場合や、送金を継続的または反復して行う場合は本人確認を要する。

筆者プロフィール

福本勇樹(ふくもと ゆうき)

ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員

研究・専門分野:リスク管理・価格評価


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