2018年新春特集 奮い立て! 地方の変革者たち

熊本経済を元気に! 震災で生まれたくまもとDMCの使命感「日本初」の挑戦(3/3 ページ)

» 2018年01月10日 06時30分 公開
[伏見学ITmedia]
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 くまもとDMCが目指すのは、海外を含めた熊本県内外のさまざまなものをつなぐプラットフォームになることだ。その融合が熊本に価値をもたらし、観光産業を成長させるドライバーになるという。企業との連携も積極的で、例えば、観光にかかわるさまざまなデータを収集、分析し、熊本への観光客増を図るために、データサイエンス専門のベンチャーであるデータビークルとタッグを組むなど、オープンイノベーションに前向きだ。「地域の魅力を皆で作り上げる、これは今までの熊本にはなかった動き」(梅本副社長)だという。

 くまもとDMCの17年度の売り上げ目標は3億円で、その後の黒字化も視野に入れている。民間企業として観光ビジネスに取り組む以上当然のことであるが、「真の目標は地域に稼ぐ力、雇用する力をしっかり身に付けさせること」だと梅本副社長は繰り返す。自分たちがもうかるための事業ではなく、地震で深く傷ついた熊本が以前よりも経済発展してほしい、そのための収益基盤をくまもとDMCが作り、地域に還元していくことが何よりも大切だと考えている。

 現に、今まで観光とは無縁だった農業従事者や漁業従事者も巻き込みつつある。地域還元という思いがなければ、このように多くの人たちの参画は得られないだろう。

 16年の熊本の観光消費額は地震の影響をもろに受け、対前年比15.0%減の2564億9700万円と大きく落ち込んだ。17年は観光客数も伸びていて、震災前の水準に回復しつつあるようだ。けれどもこれは震災特需の要素もあるため、長い目で見れば観光産業を伸ばす自助努力が不可欠なのは明白である。街の復興と経済発展に向け、くまもとDMCへの期待は大きい。

 一方、これまでの日本のDMOは一般社団法人が主体で、意思決定のスピードが遅いなど、どうしても行政的な取り組みが色濃く出ていた。それに対し、くまもとDMCは民間企業として生まれたわけだが、万が一、立ち行かなくなるようなことがあれば、今後日本でDMCは根付かないのではないかという危惧もある。くまもとDMCが果たす責任もまた大きいことは肝に銘じておかねばならないだろう。


 熊本出身の歌手、森高千里さんには故郷をテーマにした曲が多い。「この街」では生まれ育った街に対する愛情を、「ふるさとの空」では故郷を離れる寂しさと、忘れ難い夕日の美しさを歌う。自分の地元を思う気持ちはきっと多くの人たちにあるだろうが、今回の取材で熊本を訪れ、熊本の人たちの郷土愛の強さを肌で感じた。

 夕焼けで赤く染まる熊本城が多くの観光客を魅了する日が再び来るのを願っている。

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