「枡」だけで売り上げ4倍 伝統を守りながら伝える“面白さ”枡なのに新しい(3/4 ページ)

» 2018年01月12日 07時15分 公開
[加納由希絵ITmedia]

店を起点にアイデアが集まる

photo 大橋量器社長の大橋博行さん。アンテナショップ「枡工房ますや」にはさまざまな商品が並ぶ

 店には定番の枡のほか、これまでに作った八角形の枡やストラップ、ランプなどを並べた。大橋さんは、枡の技術を見せることで、「大垣の産業を紹介する土産物店にもなる」と考えていた。考えた通りに、店は地元メディアなどで取り上げられ、話題になっていった。

 その結果、店を起点として、外部との交流が生まれていった。他の業界やデザイナーなどとのコラボレーション商品や、客の要望に応じて開発した商品など、それまでとは比べものにならないスピードでいろいろなアイデアが生まれていく。

 その1つが「マスソルト」だ。09年に名古屋で開催されたイベントで、デザインを学ぶ学生と共同開発した。手のひらサイズの枡の中にバスソルトを入れて、カモミールやローズ、ゆずなどのハーブを載せた。使うときは、枡ごと湯船に入れる。すると、ヒノキとハーブの香りが浴室に広がってくる。ヒノキ風呂のような感覚まで味わえる。枡の形は何も変えていないが、単なる容器を超えた使い方を実現。ロングセラー商品となっている。

 一方、枡から大きく形を変えた商品もある。その1つが「エコ加湿器 マスト」。木材の吸水性を利用した加湿器だ。枡製造では、木材を薄く削ってつるつるにする必要があるため、大量のかんなくずが発生する。それを廃棄するのは「もったいない」と活用し、かんなくずをヨットの帆に見立てたデザインにした。ボート部分に入れた水を吸い上げ、ヒノキの香りとともに蒸発させる。

photophoto 「マスソルト」(左)と「エコ加湿器 マスト」

 ITと融合した商品もある。LEDを内蔵し、傾けると光る「光枡(ひかります)」だ。印刷やITなど異業種3社とプロジェクトチームを結成して開発。薄暗い場所でお酒を飲むシーンを盛り上げる。スマートフォンアプリから、色を変えることもできる。クラウドファンディングで支援を募り、目標金額の150万円を達成した。

photo 傾けると光る「光枡(ひかります)」(出典:枡工房枡屋

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