海外で「児童婚」が問題に、日本はどうする?世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2018年01月18日 07時30分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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日本は「児童婚対策の後進国」

 他の先進国でも、結婚年齢が16歳という国はある。例えば、スペインは数年前に多くの欧州諸国に合わせて、結婚年齢を14歳から16歳に上げている。ドイツやイタリア、英国、ロシアなどでは16歳、フランスやスウェーデンなどでは18歳で結婚ができる。ちなみに一人っ子政策があったために中国では男性で結婚できる年齢は22歳、女性は20歳だ。

 結婚年齢について、多くの国で昔からの慣例がそのままになっていて、欧州諸国でも未成年者の結婚は数が少ないという。日本もそこまで問題視されているわけではないだろう。

 国際的に見て、児童婚の定義はどうなっているのか。ユニセフの定義を見ると、「18歳未満の結婚は基本的人権の侵害である」とする。その上でユニセフは、「(18歳未満の)児童婚は、早い時期の妊娠や社会的孤立、学業の中断、またキャリアや職業訓練を制限し、家庭内暴力のリスクが高まる環境に女性を置いてしまうことになり、こうした要素は女性の発達を阻害する」と主張している。確かに一理あると思える。

 世界保健機関(WHO)はどうか。WHOによれば、「児童婚は18歳未満の結婚を指し、少年にも少女にも当てはまる。だが現実には少女に起きる場合が多い」という。そして、「児童婚は国によって大きく率が変わる世界的な課題だ。世界的にほとんどの児童婚はサハラ以南のアフリカか南アジアで起きている。南アジアでは18歳未満で結婚する少女は全体の半数近くであり、サハラ以南のアフリカでは3分の1以上である」と指摘している。

 国連の基準に当てはめると、日本は「児童婚対策の後進国」のひとつ、ということになるだろう。ただ最近、そんな現状を察してか否かは分からないが、日本では民法改正案で女性の結婚年齢を18歳に引き上げる案が盛り込まれている。また欧州の結婚年齢16歳の国々も、今後、この問題に声をあげる組織や活動家などが増え、声が大きくなればすぐに法改正することになるだろう。

 もちろん何でもかんでも“国際基準”なるものに当てはめて物を考えるべきではない。だが少なくとも、「ボーダレス」「グローバル化」の時代には、その部分を突っついてくる人たちは世界中に少なからずいる。おそらく日本女性の結婚年齢が現状のままなら、この問題も近い未来に人権意識に敏感な組織などから批判を浴びることになるだろう。

 そのとき、日本はどうするのか。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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