“耳で読む本”「オーディオブック」が急成長した理由目が不自由な人にも本を届けたい(3/3 ページ)

» 2018年01月30日 06時00分 公開
[鈴木亮平ITmedia]
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忙しい人に人気

――他にどんなことが成功につながったと分析していますか?

上田: ビジネス書を中心としたコンテンツから始めたのが良かったです。僕自身、耳で勉強してきましたので、需要はあるだろうなと思っていました。

 人間は文章を脳で音声に変換して理解してます。だから“耳学問”の方が分かりやすいのです。特に、対話形式で作られている本はオーディオブックと相性が良いようです。以前、『嫌われる勇気』の読者から、「哲人と青年をそれぞれ違う声優が演じているので、オーディオブックで聞いたらより理解しやすかった」との声も多く寄せられました。

 また近年は、文芸など新しいジャンルを加えたことでビジネスマンだけじゃなく、女性など新たなユーザーも獲得できています。それによって、会員数が一気に伸びました。

 文芸の場合、登場人物ごとに違う声優を用意するようにしています。ラジオドラマみたいな仕上がりになり、音声ならではの新しい価値を作れるんですよね。その作品の世界観をしっかり伝えられるキャスティングを徹底するようにしております。また、声優が好きなユーザーも取り込めるようになりました。

――どのような利用シーンが多いのでしょうか。

上田: 利用シーンは“ながら聞き”が多く、「LINE」をしながら聞いてたり、スマホでゲームをしながら聞いている人などもいます。ゲームをしていても耳と脳は暇な状態。ゲームの音だけ消してオーディオブックを聞く人というが増えているようです。

 あと、プログラマー職で音楽を聴きながら作業する人も多いと思いますが、最近はオーディオブックを聞きながらコードを書く人も多いようですね。

 その他には、忙しくて普段読書ができない人を取り込めています。特に、子育て中の主婦。子どもと遊びながら聞いたり、家事をしながら聞くなど、子どもから目を離さなくて済むのが利点になっています。

 何か作業を始めると、手がふさがってしまうため読書ができない。しかし、オーディオブックなら読書ができるので、忙しい人に向いています。

――今後、読み上げ機能などのテクノロジーを活用していく考えはありますか?

上田: 可能性はありますね。ただ、機械では感情表現に限界があります。「演技」が必要ないビジネス書やニュース系などは機械で良いのかもしれませんが、演技が必要な物語は声優の方が有利になります。

 読み上げ機能は進化していくと思いますが、イントネーションに課題があります。まだまだ人間に近くないので、長時間聞いていると「ストレス」になります。

 オーディオブックのように長時間音を聞く場合、「心地よく聞き続けられる」ことが重要です。この聞き心地の問題を考えると、機械にはまだ難しいですね。

――最後に今後の展望について教えてください。

上田: コンテンツ数を5万本以上に拡充していく予定です。1年後に会員数100万人突破を目指し、本を耳で読む文化を浸透させていきたいです。

photo 上田渉会長
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