テレビに進出したユーチューバーはなぜ失敗したのか世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)

» 2018年02月01日 07時40分 公開
[山田敏弘ITmedia]

何をやっていたのか

 ユーチューバーが影響力のあるコンテンツを配信しているのであれば、テレビ局としてもなんとかしてそれを取り込みたいと考えるのは自然なことだ。

 CNNはネイスタットを迎え入れて、この1年何をやっていたのか。デジタル時代の新しいオンラインニュース番組をつくり、CNNのデジタル部門の柱にしようとしていたと言われていた。しかも週に4日放映する10分番組は、完成間近との報道もあった。扱う題材は日々のニュースではなく、もう一歩掘り下げた内容のものであり、コンテンツはネイスタットがコントロールする。またCNNは「Beme News」というYouTubeチャンネルで動画配信を続け、普段CNNを見ない25歳以下の視聴者も呼び込もうと計画していた。

 だがその試みは失敗に終わった。そしてCNNはBemeを閉鎖する決定をした。2500万ドルと言われた投資がパァになったのだ。

 ネイスタットも、自身のYouTubeチャンネルでCNNを去ることになったと報告した。敗戦の弁から、この計画が失敗した原因を読み取ることができる。ネイスタットは、「CNNはオレが求めていることを与えることができなかったと思う。彼らもオレに求めているものを得られなかったと思う」と述べている。

 成功している大物ユーチューバーにCNNが何を求めたのかは明らかになっていないが、少なくともネイスタットがこれまでやってきたやり方ではないことを要求した可能性が高い。ただそれなら、ネイスタットを雇い入れる必要はないと思うのだが……。コメントからは彼のそんな本音が垣間見られる。

 さらにネイスタットは、プロジェクトの中で「答えを見つけることができなかった」「想像以上に苦労した」ことを打ち明けた。CNNとプロジェクトを進めることでアウトプットができず、「自分の存在がある意味で消えていた」とし、「少なくとも何かをつくり出すことができるので、YouTubeの自分のチャンネルで動画をつくることにする」と、心地のいい元サヤに戻ると語っている。

大物ユーチューバーにCNNは何を求めたのか

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