テレビに進出したユーチューバーはなぜ失敗したのか世界を読み解くニュース・サロン(1/5 ページ)

» 2018年02月01日 07時40分 公開
[山田敏弘ITmedia]

 米ドナルド・トランプ大統領に繰り返し「フェイクニュース」の代表格であると名指しされている米CNN。さぞや大迷惑を被っているかと思いきや、どうもそうではないようだ。

 トランプとの対立構図は、実はCNNにとっても「悪い話」ではないという。もちろんニュース専門チャンネルとして「嘘つき」呼ばわりされるのはジャーナリズム的に見るとマイナスで、一部のトランプ支持者らは本気でCNNが嘘を垂れ流していると見ている。

 その一方で、トランプのおかげで視聴率はすこぶる好調だ。CNNの広報資料によると、CNNテレビは2017年、25〜54歳の成人視聴者で史上最高の平均視聴率を記録した。ゴールデンタイムでは、08年以降で2番目に高い視聴率を出した年になったという。その高視聴率の背景にはトランプとの激しい対立があるのは言うまでもない。

 だがそんな勢いづいているCNNには、17年に目を覆いたくなるような大失敗があった。16年11月、世界的に知られる著名なユーチューバー、ケイシー・ネイスタットを迎え入れた。ネットコンテンツがテレビなどの既存メディアにとって大きな脅威となるなか、YouTubeで成功を収めている大物“タレント”を取り込む戦略に出たのだった。

 しかし、その“融合”は失敗に終わったことが、最近明らかになったのである。しかもその損失額は最低でも2500万ドル(約27億円)にも上るという。YouTubeと米大手ニュースチャンネルが手を組んで何を始めるのか大注目していた米メディアは、このニュースを大きく報じており、あるメディアは「壮絶な大失敗」と指摘していた。

 なぜCNNと有名ユーチューバーの間にケミストリーが生まれなかったのか。なぜテレビとネットは融合しなかったのか。映像メディアの今後の行方に参考になりそうなこのケースを掘り下げてみたい。

米CNNは大物ユーチューバー、ケイシー・ネイスタットを迎え入れたが……(出典:ケイシー・ネイスタットの公式サイト)
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