「テトリス」というゲームを知らない人はほとんどいないだろう。上から降ってくるカラフルなブロックを落として組み合わせる。一列そろったら消える。それを繰り返す――という非常にシンプルなパズルゲームだ。しかしそのシンプルさとは裏腹に(もしくはシンプルさゆえに)、「テトリス」は世界中の人々を熱狂させ、「落ち物ゲーム」というジャンルを作り上げた。しかし、あなたはテトリスがいつどこで生まれたゲームか知っているだろうか?
答えは1984年のソビエト連邦。日本にやってきたのは88年だ。ゲーム好きならさらりと答えられる質問だろうが、「えっ、米国製じゃないんだ」「『スペースインベーダー』(78年)と同時代のゲームだと思ってた」という人もいるのでは。社会主義の“壁”の向こうで、どのようにして作品が生まれ、どのようにして世界中に広がっていったのか? それを教えてくれるノンフィクションが「テトリス・エフェクト 世界を惑わせたゲーム」(白揚社/税別2300円)だ。
テトリスは当時のソ連にとって、外貨をもたらす貴重な知的財産だった。しかしソ連にはコンテンツ輸出のノウハウを持った人材がおらず、版権の契約は混迷を極めた。「誰もテトリスのライセンスの全容を把握できていない」という、現代では信じられないような状況で、テトリスは急速に世界に広がっていく。
混乱の中で、テトリスの関係者はタイトルの通り“惑わせ”られた。テトリスの生みの親でありながら、長らくゲームに関する権利をほとんど持てなかったアレクセイ・パジトノフ。日本初と言われるファンタジーRPG「ザ・ブラックオニキス」の作者であり、任天堂と手を組んでテトリスを日本に広げようとしたヘンク・ロジャース。ソ連側といち早く契約を進め、テトリスの権利を握ろうとしていたロバート・スタインやケヴィン・マクスウェル……それぞれの思惑が群像劇のように描かれる。
群像劇のクライマックスは、ヘンク・ロジャースと任天堂チームがライセンス契約を結び、携帯機「ゲームボーイ」のソフトとしてテトリスがやってくる一幕だ。その契約や交渉の様子はさながらスパイ映画。本書はたびたびネット上で「最強」と賞される任天堂法務部の「伝説」を味わえる1冊でもある。
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