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» 2018年02月21日 06時30分 公開

小売・流通アナリストの視点:アマゾン・ゴーの出現は既存小売にとってピンチなのか? (3/4)

[中井彰人,ITmedia]

既存小売業にもチャンスあり

 コンビニで売っているもののほとんどは、ブランドの違いはあるが、スーパーやドラッグストアに行けば買うことができる。その上、大抵のものはスーパーやドラッグストアの方が安く買えることも皆知っている。なのに、われわれはコンビニでジュースやお菓子、弁当を買う(弁当、総菜となると、コンビニの方がおいしいからという意見もあろうが)。

 なぜ、同じようなものをコンビニで買うかと言えば、今すぐに欲しい、遠くのスーパーに行く時間がない、ということであろう。こうしたわずかな時間を付加価値として提供するコンビニ需要に、ECは対応することができない。このことを認識するアマゾンは、リアル店舗であるアマゾン・ゴーを開発して、ECシフトが進まない時間価値優先ニーズを取り込む業態を投入した。短期間に鮮度劣化が進む生鮮品についても、同様の認識を持っているアマゾンは、リアル店舗の有力企業であるホールフーズの取得という決断を下している。アマゾンがリアル店舗を展開するマーケットは、リアル店舗がECと共存できることを意味しているのである。

 アマゾン・ゴーが、最新のテクノロジーを活用したリアル店舗であることは、言うまでもない。ただ、リアル店舗である限り、ECをベースとするアマゾンにとって、アウェーであることも間違いない。リアルの世界であれば、既存小売業がアマゾン・ゴーと同等のテクノロジーを持って、消費者の利便性を実現すれば、そうやすやすと顧客を奪われることはないはずだ。それどころか、アマゾン・ゴーと同等のレジ処理能力を持った日本のコンビニがあれば、これまで積み上げたノウハウを考えると、そう簡単にアマゾン・ゴーに席巻されるとも思えない。アマゾンの参入で、リアル店舗における利便性追求の競争が起こり、われわれの買い物ストレスを解消してくれる良い刺激になるはずだ。

 ただ本当の脅威は、アマゾンのリアル店舗進出が、単純にコンビニや生鮮食品のマーケットを奪うことが目的ではないことだ。あらゆる消費行動のビッグデータを収集するという遠大な計画を遂行中のアマゾンは、消費生活のさまざまなデータを集めている。ECというツールではシェア獲得スピードが遅いマーケットで、リアル店舗を使い始めたということだ。

 アマゾンは、消費者の購買行動に関するビッグデータを補足できる体制を構築し、近いうちにこれまでは考えられなかったような提案をしてくるようになるだろう。例えば、ビッグデータから購買の嗜好パターンを読み切り、私たち一人一人の個別のAIコンシェルジュのような存在となった「Amazon Echo」(アマゾンのAIスピーカー)を通じて、最適の商品、サービスを提供するようになる、というイメージだ。そうなると、「アマゾン恐怖指数」は現実のものとなり、ECシフトに耐えた企業群も含めて、既存小売業は、強烈に圧迫を受けることになるだろう。

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