視認性を向上させるためには、「色数を減らす」のも1つの手段だ。小田急の路線図も、急行と通勤急行をオレンジ、準急と通勤準急を緑へ統一することで、色数を減らしている。それぞれの区別は太線・細線でつけるようになった。
しかし、多くの路線図は同じ色=同じ路線で描かれている。これまでも「急行(赤)」と「多摩急行(ピンク)」は別の色だった。そのため、乗客の中には「同じ色なのにどうして2種類あるの?」と戸惑う人もいるかもしれない。同じ色=同じ列車種別という「新ルール」の追加に気付く必要があるからだ。
では単純に色数を増やせばよかったのか……というと、これもまた悩ましい。色ばかり増えて虹のようになれば目がチカチカしてしまう。さらに前述の相互接続まで考えるとなれば大変だ。
1つの解決策として、例えば東武鉄道の東武東上線停車駅案内では、東横線や副都心線の列車種別を単一色のグラデーションで表現している。これなら色数が発散することはない。
路線図は「見やすさ」と「分かりやすさ」の戦いでもある。見やすさを追求してシンプルにすれば情報が抜け落ち、分かりやすさを追求して情報を盛り込めば視認性が落ちてしまう。両立を目指すか、どちらかを優先するか。路線図をつぶさに観察すると、作り手の意図を味わうことができるのだ。
1975年宮城県石巻市生まれ。大手SIerでシステムエンジニアとして15年勤務したのち、フリーライターに転身。IT、お笑い、育児など幅広く執筆する傍ら、路線図研究家としても活動。メディア出演のほか、ライター西村まさゆき氏とのイベント「路線図ナイト」では毎回100人超の観客と国内外の路線図を愛でるなどしている。好きな路線図はロンドン地下鉄、プラハ地下鉄、福岡市交通局。公式サイト:inoue-masaki.com
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