警備員不足を補うのはPepperと人工知能実証実験で万引き防止に効果あり

» 2018年02月27日 06時00分 公開
[昆清徳ITmedia]

 警備システムを提供するユニボット株式会社(東京都・港区)は、人型ロボット「Pepper(ペッパー)」を活用した次世代型の警備アプリケーションの本格展開を進める。

 警備システムの名前は「UNIBOT」。ペッパーが店内を巡回監視するだけでなく、人工知能(AI)を活用した画像認証技術で不審者の監視を行う。ペッパーに内蔵されたカメラ映像をクラウドに送信することであらかじめ登録した不審者を認識する。顔認証の結果をスマホやタブレットに通知することで従業員との連携も可能になる。

 2017年1月20日〜2月19日に福島県内の書店でUNIBOTの実証実験を行った。実証実験では書店が把握していた不審者情報をクラウド側に記憶させてシステムを運用した。ペッパーによる客への声かけなどを行った結果、万引きの被害額が6割強減少したという。

photo 画像認証技術を活用する(出所:ユニボット公式Webサイト)
photo UNIBOTの概要(出所:ユニボット公式Webサイト)

 UNIBOTの導入コストは1カ月あたり税込みで15万円(店内の監視カメラがネットにつながる環境にある場合)。内訳はペッパーのレンタル料金が6万4800円、UNIBOT利用料が8万5200円となる。

 UNIBOTの取り組みが広がれば万引き被害の軽減が期待できる。「GRTB(グローバル・リテイル・セフト・バロメーター)2014-2015」の調査によると、日本国内の小売業における万引き被害額は約1兆円。利幅の薄い商品を大量に売ることでなんとか利益を出している店舗にとっては万引きによる被害は無視できない存在だ。

深刻な警備員不足をロボットで補う

 ユニボットが目指しているのは万引き対策だけでなく、ロボットを活用した新しい警備サービスの提案だ。警備には人による人的警備とセンサーなどの機械を利用した機械警備がある。人的警備は犯罪を抑止する効果があるが高コストというデメリットがある。機械警備は低コストで広いエリアをカバーできるが警備員が駆け付けるまで時間がかるというデメリットがある。同社では人的警護にロボットと人工知能を組み合わせることで、低コストかつ広範囲をカバーしながらも高い犯罪抑止効果の実現を狙う。

 サービス提供の背景には業界全体の警備員不足もある。ユニボットの大槻正社長によると「(需要に対して)まったく足りていない」状況だという。親会社で警備サービスを提供するユニティガードシステム(東京都・港区)では「万引きGメン」と呼ばれる万引きを摘発する従業員が不足している。高齢化も進んでいる。「万引きGメンはもともと特殊な能力が必要とされるうえに容疑者から危害を加えられるリスクがあり、過去には傷害事件も発生している」(大槻社長)。

 経済産業省が発表する第3次産業活動指数(第3次産業の活況の程度を表す指標)をみると、「警備業」は平均よりも高い数値で推移しているので、それだけ需要が高まっていると読み取れる。不安定な雇用形態が多く待遇も低く抑えられていることも警備員不足を加速させている。

 警備業界では人手不足解消のためドローンの活用などが研究されている。人的警備の不足をロボットで補う流れは今後も加速するだろう。

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