「時差出勤」で働き方は変わるか 導入企業の狙いと効果:柔軟性を高める目的とは(2/2 ページ)
どのような人がこの制度を使っているのか。三井物産では、業務の都合に臨機応変に対応したり、個人の生活に合わせて勤務時間を選択したりするために活用されている。
「例えば、欧州や中南米など、時差のある地域の案件を担当している社員の場合、夕方以降に現地会社が始業するため、朝遅く出勤する時間帯に業務時間を設定し、その分残業時間を削減しています。また、子育て中の社員が、保育園のお迎えのために時短勤務を選択せざるを得なかったのが、朝早く出勤する時間帯に業務時間を設定したおかげで、フルタイム勤務が可能となりました。さらに、自分が集中できる時間帯を見極めて、出勤時間を設定するケースもあります」(同)
同社は16年以降、1時間単位の有給休暇取得制度や、モバイルワークなども導入してきた。時差出勤と組み合わせて利用することで、柔軟な働き方が可能になったという。今後も、競争力強化につながる施策の導入を検討していく。
働き方を柔軟にするのは、それぞれの社員の力を最大限発揮できるようにするため。制度ありきではなく、自社の業務の特性を見極めた上で、効果が見込める制度を導入して運用していくことが、実効性のある取り組みにつながるようだ。
東京都は17年7月、時差出勤を呼び掛ける取り組み「時差Biz」を初めて実施した。18年は集中取り組み期間を長くしたり、参加企業をさらに増やしたりして、快適な通勤環境を目指す取り組みを進める。この取り組みで掲げられている「通勤電車の混雑緩和」を実現するのはまだ難しいが、それぞれの企業や個人にとって最適な通勤時間や勤務環境をあらためて考える機会にはなるだろう。
東京都は2018年も「時差Biz」の取り組みを加速させる(出典:「時差Biz」公式Webサイト)
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