なぜ両者の「人材システム」はここまで似通っているのか。いろいろなご意見があるだろうが、筆者は官僚の方を見て忖度するマスコミ側が模倣したと思っている。
先ほども申し上げたように、マスコミ記者と高級官僚はメーカーとサプライヤーである。
では、出世や組織内評価の手段である「特ダネ」を提供してくれるサプライヤーが数年ごとにコロコロ動くなかで、できるだけ「特ダネ」をつくろうとするメーカー側はどういう動きをするのがベストだろうか。
高級官僚とまったく同じペースで転勤をすればいいのだ。
若いうちは地方を回るので、「今度は長崎に赴任するの? あそこは同期がいるから紹介するよ」なんて人間関係も密にできる。同じように地方を回り、同じように苦労をして東京に戻ってくるので、かたや霞が関官僚、かたや東京本社の記者でも「同胞意識」ができるのだ。
そうなると、少し前に仕えることになったアホな政治家なんかよりもよほど付き合いが長いということで、官僚側も平気で記者へ情報を流してくれるというわけだ。
こういうマスコミと官僚の蜜月関係によって、われわれ一般人は政権の内幕や権力の腐敗を察知できる、という大きなメリットがある。だが、どんなことにも良い面と悪い面があるように、現行の官僚システムの問題点はスルーして、何でもかんでも政府が悪い、という「ゆがめられた報道」が行われるというデメリットもある。
当然だ。これまで見てきたように、日本のマスコミは政府に忖度するのではなく、官僚に忖度をすることで、ここまで大きな既得権益を得ることができた。つまり、「政府=悪、官僚=善」というアングルをつくり続けなければ、「権力を監視できるのはマスコミだけ」という特権的地位も失ってしまうということだ。
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