東京メトロの路線図に潜む「しま模様」の謎あなたの知らない路線図の世界(2/2 ページ)

» 2018年03月26日 07時30分 公開
[井上マサキITmedia]
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 これを実現したのが横浜市営地下鉄だ。08年に開業した横浜市営地下鉄グリーンラインは、駅構内のサイン(運賃表やトイレ案内図など)にCUDを取り入れている。「交通案内図」に描かれた路線図も例外ではない。

横浜市営地下鉄の路線図。センター南駅で撮影

 一見、普通の路線図に見えるが、拡大すると先ほどの「視覚配慮運賃表」のように路線に縞模様が入ってるのが分かる。乗換駅では黒く伸びた線が路線同士を結び、路線の交差が生む混乱を抑えるように工夫されている。

新横浜駅周辺 新横浜で東海道新幹線・JR横浜線・横浜市営地下鉄ブルーラインに乗り換えられることを、黒い線を結ぶことで示している
横浜駅周辺の拡大図 横浜駅は5社9路線が乗り入れるターミナル駅。黒い線のおかげで、1箇所に線を集中させずに済む

 他にも、色数を抑えるために他社線は「ラインカラー」ではなく「鉄道会社」で色分けしたり、東海道新幹線のみ曲線で描き在来線と異なる列車種別であることを示したり、細かい工夫が施されている。一般色覚者も色弱者も、同じ路線図を使うことができるのだ。

 これらの取り組みが評価され、横浜市営地下鉄は「平成20年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰」において「内閣府特命担当大臣表彰優良賞」を受賞していている。言わば「国に表彰された路線図」でもある。

見えている世界が全てではない

 先日リニューアルされた小田急電鉄の路線図も、色数の抑制やラインカラーの明記など、CUDに配慮したものだった。小田急電鉄は2016年に「業務掲示カラーユニバーサル化への取り組み」としてグッドデザイン賞を受賞しており、新設・更新するサイン類についてCUDを念頭に置くとしている。路線図のリニューアルもその一環だろう。

18年3月17日以降の小田急の路線図(小田急電鉄)

 CUDに配慮した路線図は「見えている世界が全てではない」ことを教えてくれる。色覚の壁を越えるデザインとアイデアの存在を知ると、路線図を観察するのがますます楽しくなってしまうのだった。

井上マサキ氏のプロフィール:

 1975年宮城県石巻市生まれ。大手SIerでシステムエンジニアとして15年勤務したのち、フリーライターに転身。IT、お笑い、育児など幅広く執筆する傍ら、路線図研究家としても活動。メディア出演のほか、ライター西村まさゆき氏とのイベント「路線図ナイト」では毎回100人超の観客と国内外の路線図を愛でるなどしている。好きな路線図はロンドン地下鉄、プラハ地下鉄、福岡市交通局。公式サイト:inoue-masaki.com


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