「森友問題」を解決する秘策は、ある世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2018年03月29日 07時35分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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「森友問題」でブロックチェーン技術を使うと……

 では、今回の森友学園問題にブロックチェーンという技術を当てはめるとどうなるのか。森友問題では、改ざんは決済文書に関与した一部の人たちなら行うことが可能だった、と言われている。ならば、これはホンジュラスで土地の所有者を勝手に書き換えている政府高官らと同じではないだろうか。

 ブロックチェーンによる分散型のシステムで記録を管理していれば、誰も決裁で確定した公文書を書き換えることはできない。土地の売買の時点から、ブロックチェーンで管理していれば、複数がその取引を検証・承認することになるために、問題は取引時に発覚するだろう。また取引が承認されてしまっても、後に誰も改ざんなど不正はできない。

 つまり、ある土地の歴史から所有者履歴、土地にまつわる行政による文書、周辺で起きた環境の変化、そして森友問題なら、国有地が値引きされるまでの経緯と取引過程までを全て結んで、行政や国など利害関係者、第三者機関、市民などが一緒に複数で承認して記録しておけばいい。事故物件のような記録もそこには全て残ることになり、後で「だまされた」というようなこともなくなるだろう。

 そして暗号化技術で、外部からの攻撃にも対応する。もちろん個人のプライバシーの問題になるような箇所は公開されないようにする工夫は必要だが、文書の流出や改ざんを防ぐことが可能になるだろう。

 前出の一橋大学名誉教授、野口氏の言うように、記録を石版に刻み込んでみんなで管理するために誰も改ざんできないとの認識が広がれば、そもそも改ざんしようという気持ちすら起きないだろう。

 つまり、ブロックチェーンなら決裁文書への「忖度(そんたく)」や「圧力」なども無縁になる。今回の森友問題で失墜した官公庁の公文書の信ぴょう性への疑念を払拭(ふっしょく)するためにも、政府は本格的に導入を検討した方がいいかもしれない。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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