トイザらスを破滅に追いやったのは誰か、得するのは誰か来週話題になるハナシ(4/5 ページ)

» 2018年03月30日 07時43分 公開
[藤井薫ITmedia]

ベビーザらスは好調だったのに

 敗因はさらにある。

 オモチャだけの販売は、実際には非常に不安定なビジネスだ。そんな中で、トイザらスが買収された際、同社のオモチャの売り上げは減少傾向にあったが、ベビー用品を扱う部門の「ベビーザらス」はビジネスが好調だった。

 ベビー用品は、クリスマス時期に売り上げのピークが来るオモチャとは違い、年間を通して継続的に売り上げが見込める安定したビジネスだ。

 当時、ベビーザらスはトイザらスの営業利益の多くを占めるほど重要な部門となっていたが、そのベビー用品のビジネス強化に取り組むのが遅れてしまった。経営陣の判断ミスだ。

 具体的に言うと、競合他社は、オムツやミルクなどのベビー用品を定期配達するサービスを始めていたが、同じような流れに乗ることができなかった。その結果、多くの顧客を便利な定期配送サービスを提供するアマゾンなどに奪われてしまった。

 せっかく、ビジネスを拡大させるチャンスがあったのに、トイザらスは見逃してしまった――。最終的にはベビー関連のビジネスをあきらめ、オモチャだけで勝負しなければならない厳しい状態に自らを追い込んだ。

 そんな背景のなか、トイザらスは17年、書き入れ時のクリスマス商戦で惨敗する事態に見舞われた。クリスマスは1年の売り上げの多くを稼ぎ出す大切な時期なのに、直前に同社が経営破たんするとのニュースを聞いた顧客は、購入した商品を返品できなくなるかもと不安になり、トイザらスの利用を控えた。まさに踏んだり蹴ったりである。

 もっとも、ビジネスが低迷していたとはいえ、トイザらスの売上高は110億ドルほどある。アナリストによると、米国のオモチャ市場の20%を占めているという。

 それでも、消費者の不安を十分に取り除くことができなかったトイザらスは、クリスマス商戦の売り上げが販売計画より下回り、営業利益を上げるどころか利息を支払うことも難しくなってしまった。そして、とうとう全米で全店舗の閉鎖という事態になったのだ。

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