70周年“ブランドのコメ兵”が直面した「2つの危機」石原卓児社長インタビュー(2/3 ページ)

» 2018年04月03日 07時00分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

爆買いによる最高益、そして翌年の赤字転落

 しかしその翌年、風は大きな“逆風”と変わった。爆買いブームが終息し、16年9月の中間決算では連結四半期純損失2800万円と株式会社化以降初の赤字に転落した。

 石原社長は「僕もショックだったし、社員も非常にショックを受けていました。特にリーマン直後の苦しいコメ兵を知らない若い社員たちから、『本当に大丈夫ですか?』と不安そうな声をかけられましたね。エリアの責任者を集めても、『頑張ろう、心配するな』と声を飛ばすことしかできませんでした」と当時を振り返る。

 このままでは危ない――そう判断した石原社長は、「止血」をすると決めた。軌道に乗っていなかった9店舗を閉店。その一方で、梅田、新宿、名古屋の好立地に大型店を出店した。

 「不採算店を閉店することは守りの判断に見えますが、そうした店舗で店長をやっていたエース級の社員を、注力したい大型店に配置することができたのはプラスでした。彼らに対しては、止血して挽回するから頼んだ、という気持ちでしたね」

 品ぞろえも切り替えた。爆買いの波が押し寄せていたとき、100万〜300万円の商品が売れることも多くなり、社内でもニュースになって盛り上がっていたほどだった。高額商品を売るモチベーションが上がり、ラインアップが充実する一方で、特に国内の消費者に人気の価格帯である10万円前後の商品は少なくなっていた。爆買いによって売り上げが伸びていた裏で、いつのまにか既存の客が離れていたのだ。

 「爆買いに踊らされていた部分がありました。当時は『売れているからこれでいいんだ』『業界が伸びているのに、コメ兵だけが負けるわけにはいかない』『去年の自分たちに勝たなければ』という思いでいっぱいで、見えなくなっていた部分がありました。1回鼻を折られてリセットしたような気持ちです。コメ兵の強みを見直して、よくないところを1回切って、筋肉質に戻ろうと。できることを全部やって、丁寧に商売をしていったら、業績がよくなってきています」

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