1つめの理由として「効果が分かりづらい」ことが挙げられる。
「ゴキブリを見ないで退治」することは裏を返せば、ゴキブリの死骸が出ないので、本当に退治したかどうか確認のしようがないということだ。製品の品質やメーカーの技術力が疑わしいと言っているのではなく、消費者側に「殺した実感」がないので、効果に対して疑念を抱く恐れがあると申し上げているのだ。
例えば、「見ないで殺す」とうたう製品を使用して現実にゴキブリを退治したとしよう。が、使用した者はゴキブリを見るのも嫌な人なので、死骸を確認しないし、するつもりない。そんななかで、もし新たなゴキブリが侵入してきてカサカサしているのを目撃したら――。
自分の住まいの衛生問題を棚に挙げて、「この製品はインチキだ!」と怒りに震える方もいらっしゃるのではないだろうか。
そんなの考えすぎだって、と思うかもしれないが、これまで長きにわたって繰り返されてきた「ゴキブリVS. テクノロジー」という戦いの歴史を振り返れば、そのような消費者トラブルも珍しくない。
分かりやすいのが、東芝の「ゴキトール」だ。
年配の方ならば覚えているかもしれないが、1968年5月、「ゴキブリ退治の新兵器登場」というふれこみで売り出された「乾電池式ゴキブリ取り器」である。
野菜クズなどの餌で箱の中へゴキブリを誘い込み、乾電池の電流でシビレさせるというもので、いま聞くとバカらしいほど単純な構造だが、なにせ当時はまだ「ゴキブリホイホイ」も世になかった時代である。当時の価格で1700円とそれなりにしたが、ゴキブリに悩む消費者が飛びついた。
が、ほどなくしてこの製品は販売中止へ追い込まれる。確かに、理論上はゴキブリをシビレさせて動きを止めることに成功したものの、購入者がその事実に気付く前に、ゴキブリが正気を取り戻して逃走してしまうので、「取れないぞ」という苦情が殺到したのである。
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