1センチ単位で指定できる家具サービスの舞台裏ありそうでなかった(3/4 ページ)

» 2018年05月01日 06時00分 公開
[昆清徳ITmedia]

工場に何度も足を運んだ

 工場の担当者や現場の職人たちの協力を取り付けるには、相手の心に響くような説得をしなければならない。当時の苦労を峯浦社長が振り返る。

 「異文化の相手とビジネスをするのはとても大変です。職人の方たちはいわばアーティストです。彼らの哲学や工場のやり方を尊重しなければいけません。ビジネスモデルに共感してもらうために、丁寧な説明を繰り返しました」

 説得をする過程で、徐々に理解を得られるようになったという。

 「工場の方々も、OEM(相手先ブランドによる生産)に頼る経営を続けることへの危機感を持っていました。同じビジネスを続けていては、そのうち価格競争に巻き込まれるからです。こういった背景もあり、1点物を安価につくるというビジネスモデルの将来性に共感してくれました」

これまでの経験を生かす

 実は峯浦社長はこの新事業を立ち上げる前に、IoT家具を製造・販売するカマルクホールディングス(シンガポール)で働いていた。カマルクのジャカルタ支店に勤務していた際に、インドネシア語を現地の大学で学んだ。コンピュータとスピーカーが内蔵された「サウンドテーブル」の立ち上げにかかわっており、工場との交渉は今回が初めてではない。現地の言語や文化を理解していたことも交渉に役立った。

 工場の担当者や職人の理解を得られたあとは、本格的に事業立ち上げの準備に取り掛かった。何度も現地の工場に通い、木材を切断する職人、塗装をする職人、穴をあける職人がそれぞれ作業しやすいような製造指示書をどのようにつくるか、試行錯誤を繰り返した。

 峯浦社長はCTOが作ったシステムと現場の橋渡しの役割も担った。システムの都合で職人にとっては面倒と感じられるような作業をしてもらう必要があった。逆に、職人が働きやすいようにシステムを変更しなければいけないこともあった。

 こういった地道な調整を踏まえ、「SIMPLE BOX」の注文、製造、発送までの一連の仕組みが出来上がった。

photo 工場の様子

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