JRの“大回り乗車”で房総半島1周 海を眺めて名物駅弁を食べる：杉山淳一の「週刊鉄道経済」GW特別編（3/7 ページ）

[杉山淳一，ITmedia]

菜の花弁当とトンかつ弁当

　千葉駅から離れると水田が現れる。田植えが始まっている。この駅弁のご飯も、こんな田んぼで採れたのかな。佐倉の先で成田線が分岐して、総武本線は単線になった。八街（やちまた）駅で長時間停車。上り列車とすれ違いだ。駅の看板に「名物　八街落花生」とある。千葉県の名産はピーナツとは知っていたけれど、その中でも八街市が全国1位だという。そう言われると食べたい。落花生の駅弁はないのかな。

おっ、田植えだ！

　成東駅で東金線に乗り換えだ。ここまで来ると、かなりローカル線らしい風景。空が広い。青い。風が気持ちいい。東金線の電車は0番乗り場ですでに待っている。ちなみに、0番乗り場とは、1番乗り場よりあとから、駅舎寄りにできた乗り場という意味。基本的に乗り場は駅舎側から1、2……と付けていくけれど、あとから駅舎寄りに乗り場ができたとき、番号を付け直すよりも0番にするという事例が多い。

成東駅から東金線に乗り換え

先頭車両はクロスシート。旅の気分が盛り上がる

　午前10時21分の発車まで15分ほどあり、大網駅到着は10時43分。先頭車の乗客は私だけ。よし、駅弁タイムだ。菜の花弁当は簡単に言うと、ご飯の上に鶏そぼろと卵そぼろが載った2色どんぶり。九州の駅弁「かしわめし」に似ている。ただし、黄色と茶色の境界にアサリの串焼きが入っている。小さな貝の身に串を刺すなんて手間がかかっている。さすが万葉軒。千葉の味だ。ちなみに、菜の花のおひたしなどは入っていない。菜の花弁当の名前は、鶏そぼろを地面に、卵そぼろを菜の花に見立てたらしい。緑の漬物が鮮やかだ。

万葉軒の菜の花弁当。卵そぼろが菜の花のイメージ

　発車までに食べ終わった。この電車は大網経由の千葉行きで、駅に止まるたびにお客さんが増えてくる。東金で座席は埋まった。運転台の後ろで小学校高学年くらいの男の子が2人、電車好きらしく、カメラを構えている。新米の乗り鉄だな。小学生には大冒険じゃないか。そういえば私も中学時代、同級生を誘って千葉を旅した。小湊鐵道と、まだ国鉄時代の木原線（現・いすみ鉄道）を乗り継いだ。懐かしい。